「連帯責任論」が復活? 「広陵高校問題」がSNSで大炎上した理由をITジャーナリストが解説
第107回全国高等学校野球選手権大会の広島県代表・広陵高校が2回戦からの出場を辞退した。今年1月に寮内で上級生による下級生への暴行行為があり、それがSNSで広く拡散されたことが原因だ。中には寮の爆破予告まであったという。もっとも、広陵は3月、日本高等学校野球連盟(高野連)から厳重注意を受け、関わった上級生4名には1カ月の対外試合出場禁止処分が言い渡された上での甲子園出場だった。
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夏の甲子園を不祥事が原因で途中で出場を辞退したのは初のケースだ。一体何があったのか。スポーツ紙記者は言う。
「広陵の発表によると、今年1月22日、寮内で禁止されているカップラーメンを当時1年生部員だったAが食べていたことがわかり、2年生部員4名がそれぞれ個別にAの部屋を訪れ、Bが胸を叩く、Cが頬を叩く、Dが腹部を押す、Eが廊下でAの胸ぐらをつかむ行為をしていたことが判明したため、広島県高野連を通じて高野連に報告。野球部には厳重注意処分、関わった4名には1カ月の公式戦出場禁止処分が下されました」
すでに解決済みの話ではないのだろうか。
「Aの保護者から不適切な行為をした上級生として別の2名の名前が挙がっていたため学校が聴取したところ、そのような行為は確認できなかったそうです。さらに『学校が確認した事実関係に誤りがある』との指摘もあり、改めて部員に確認したところ、新事実は出てこなかったそうです。加害部員の4名はAに謝罪しましたが、Aは3月末で転校してしまったそうです」(スポーツ紙記者)
ではなぜ問題が再燃したのだろう。
SNSが復活させた連帯責任
「Aの保護者を名乗る人物がSNSに投稿した内容が拡散されました。広陵は1回戦は勝ちましたが、2回戦を待たずに出場を辞退したわけです。結局、広陵は“連帯責任”をとらされた格好です。高野連が処分済みであることを発表していなかったことも原因の一つだとは思いますが……」(スポーツ紙記者)
かつて高野連は、連帯責任を理由に甲子園出場を辞退させるケースが少なくなかった。
「中には野球部員でもない生徒の不祥事で夢の甲子園を辞退せざるを得なくなったケースもありました。まるで軍隊のようだという批判が強まり、高野連も2000年くらいから連帯責任を問わなくなり、不祥事を起こした当該部員のみの責任を問うように変わってきました。しかし、今回、皮肉にもSNSが連帯責任を復活させたような形になってしまいました」(スポーツ紙記者)
広陵の調査の通りなら、加害部員は4名だ。甲子園のベンチ入りは20名だから、仮に加害部員の全員がベンチ入りしていたとしても、なぜ残りの16名までもが出場を辞退せねばならなかったのだろう。ITジャーナリストの井上トシユキ氏に聞いた。
「SNSは単純なクリーンさを求めすぎているように思います。薄っぺらい正義感と表裏一体です。なんだか“日本人ファースト”と通底しているような気さえします。被害部員のためという主張はある意味で間違いではないけれど、薄いんです」(井上氏)
そういった主張をするのはどのくらいの世代なのだろう。
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