「連帯責任論」が復活? 「広陵高校問題」がSNSで大炎上した理由をITジャーナリストが解説

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出場辞退が目的だったのか

「バラエティに富んでいるのですが、40代、50代が多いように思います。漢字の表記、例えば『或いは』という言葉が漢字か平仮名か――若い世代は漢字変換されても見慣れていないから直すと思います――そういった言葉を残している方を多く見るからです。SNSで熱心に炎上に参加する人たちとなると、2ちゃんねるに参加していた世代の可能性がある。ブームから25年は経ちますから、当時25歳だった人も50歳になります」(井上氏)

 高野連が厳しかった頃を覚えている世代でもある。

「美しい青春像がねじれて、一周した感じもありますね。学級会で出てくるような正論こそ、かえって使いやすいのでしょう」(井上氏)

 キッカケとなった書き込みは被害者の保護者と言われている。

「本当に保護者なのかは確認しようがありません。問題提起ができたのはよかったかもしれませんが、投稿者がどういう結末を望んでいたのかは不明なままです」(井上氏)

 もし加害部員4名の処分が目的だったのなら、他の部員まで犠牲になるのは大きすぎる。

「被害部員にとっても、かつてのチームメイト全員の出場辞退を求めていたのかはわかりません。しかも、今回とは別の昔の事件まで持ち出されるようになってきています。言い方は悪いですが、広陵がおもちゃにされている状態です」(井上氏)

 なぜここまで大きな騒動になってしまったのだろう。

まず公表

「まず、広陵の初動が悪かったことが騒動を大きくしたと思います。あくまでもSNSに対する初動ですが、事件の把握はずいぶん前にあったようなので、その時点で他人に突かれてまずいことは自ら公表し、まずは謝る。同時に『今後はこのような対策をしていきます』ということを打ち出して実行し、その様子をSNSなどで知ってもらうといったことをやっていれば、それほど大きな騒ぎにはなっていなかったと思います。そうでないと陰謀論的な見方に推進力を与えてしまうんです」(井上氏)

 陰謀論的な見方とは?

「不祥事を隠したのは学校関係者の師弟が絡んでいるからとか、地元有力者の子供らしいといった愚にもつかない話に尾ひれがつきやすい。それが本当だろうが嘘だろうが、憂さを晴らすかのように罵詈雑言を浴びせてスッキリするのです。昨今の炎上は、安全地帯から池に落ちた犬に石を投げるようなものですから、ネタは何でもかまわない。“死んで詫びろ”というような定型文、罵倒の常套句みたいなものまで作られており、その主語を炎上している対象に置き換えるだけで簡単に炎上が起きてしまっている印象を受けます。憂さ晴らしになれば何でもいいのでしょう」(井上氏)

 一見すると「被害者のため」とした書き込みも見受けられる。

「そんな考えはありません。自分たちが都合よく憂さ晴らしができれば何でもいいんです。明らかに同じアカウントの人物が、数日後には180度変わった書き込みをしていますから。ストレスが溜まっているんですかね。自分に非はなく、相手が圧倒的に悪い、いくらぶっ叩いても安全だ、まさか名誉毀損なんて逆襲をしてくるわけがない……というときに、みんなが張り切ってしまうんですね。彼らには、もし自分が同じことをやられたら嫌でしょという発想はありませんから」(井上氏)

 今後やるべきことは広陵にあるのだろうか。

「本当に疑惑があるのなら徹底的に調査し公表することでしょう。そして加害者の部員たちが更生していることを公表してもいい。それでないと、もし次の甲子園で代表になったとしても、また蒸し返されることになるでしょうから」(井上氏)

 高野連も処分した学校について、その理由を原因とともに公表したほうがいいかもしれない。

デイリー新潮編集部

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