「夏の甲子園」期間中に部員の喫煙発覚! 39年前の“享栄事件”で起きたこと 今年の“広陵事件”との大きな違いとは!?

スポーツ 野球

  • ブックマーク

 今夏の甲子園大会に出場した広陵が、SNS上で今年1月の暴力事案を拡散され、別の事案でも元部員が被害を訴えていることが判明したことを受け、8月10日、2回戦以降の出場を辞退した。大会途中での不祥事による出場辞退は史上初の事態だった。大会期間中の出場校の不祥事発覚といえば、1986年夏に享栄(愛知)が野球部員の喫煙現場を写真雑誌に激写された事件を思い出す人も多いはずだ。話は39年前に遡る。【久保田龍雄/ライター】

現場の監督として申し訳ない

 プロ注目の本格派左腕・近藤真一(元中日)を擁して春夏連続出場を果たした享栄は、1986年8月9日の1回戦で唐津西に8対0と大勝し、初戦を突破。近藤も2回に内野安打を許しただけの1安打15奪三振の快投で、春のセンバツ初戦で新湊に0対1で敗れた雪辱を果たした。

 8月12日には2回戦の組み合わせ抽選が行われ、同14日の第4試合で東海大甲府と対戦することが決まったが、翌13日、思いもよらぬ事件が明るみになる。

 開会式3日前の8月5日午後9時頃、ベンチ入りしている部員2人と登録外の部員2人の計4人が、兵庫県宝塚市内の宿舎から外出。近くの公園にいた見知らぬ女の子数人から「享栄の選手ですか」と声をかけられ、タバコを勧められて喫煙している様子が、写真雑誌『Emma』(エンマ、文藝春秋)に激写されたのだ。

 その後、4人は宿舎に戻ったあと、消灯後に登録外のもう一人の部員も加わり、部屋で貰ったタバコを吸ったという。

 さらに同9日の唐津西戦終了後、前出のベンチ入り部員2人が外出先から宿舎に帰る途中、タバコの自販機のランプが点灯しているのに気づき、1人がボタンを押してセブンスターを取り出した。次いで自ら購入しようとコインを投入したところを撮影されたというもの。

 これらの報道が事実なら、一部不自然に思える展開もあるが、たとえどんな事情があっても、高校生の喫煙は許されない。

 雑誌側から事実確認の取材を受け、初めて事件を知った学校側は、13日夜、大会本部に報告し、陳謝するとともに、14日までに事件に関わった登録2選手の抹消と野球部長の引責辞任の措置を取った。

 同校の杉山英夫校長は「喫煙した5人は宿舎で謹慎させている。大会の最中に不謹慎な行為をして申し訳ない」と報道陣に謝罪し、「出場辞退は考えているか」の問いには、「個人的にはその気持ちもあるが、大会本部に一任したい」とした。

 柴垣旭延監督も「常々高校生としてあるまじき行為をしないよう、耳にタコができるほど注意してきたつもりだが、私たちの指導がまだ足らなかったのか、まさかと……。歴史ある大会に汚点を残してしまい、現場の監督として申し訳ない」と沈痛な表情で語った。

次ページ:勝つことで償いをしようと

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。