夏の甲子園に2年生の新スター候補が登場! 聖隷クリストファー・高部陸は“学業優秀” 有名大学とプロが獲得を巡り水面下で「情報戦」も

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どんな判断を下すのか

 今年のドラフト対象となる高校3年生の有望選手も、今年の選抜の時点で、既に進学や社会人入りが決まっている選手が多いということがスカウトの間でも話題となっていた。

 今年の高校ナンバーワン左腕の言われている芹沢大地(高蔵寺)は早々に社会人希望を表明しており、昨夏の甲子園優勝投手となった西村一毅(京都国際)も東京の強豪大学への進学を目指して、プロ志望届を提出しないと言われている。まだ、2年生である高部を巡る争奪戦が水面下で動いている話を聞いても、大学や社会人サイドの動きが早くなっていることは確かだろう。

 その一方で、進路を早く決めることにはリスクが伴うという。ある社会人チームの採用担当者はこう話してくれた。

「今では最終学年になる前に“内々定”という形になる選手も少なくありません。ただ、そういう選手はその後の学生野球で怪我をするケースもあります。内定していた投手が、肘を痛めてトミー・ジョン手術を受けることになり、1年目は投げられなくなったという話も聞きますね。またプロ志望届は提出しても、決めた順位以下なら入社する“プロ待ち”で内定を出すことも多いですが、そんな選手がことごとくプロに指名されてしまうケースもありました。こちらとしても、『プロならプロ』『進学なら進学』『社会人なら社会人』とはっきり決めて、ドラフトが終わってから進路を正式に決めてもらう方が、本当はやりやすいですね」

 選手側からしても早く進路が決まった方がプレーに集中できるというメリットはある分、一方で気が緩んでパフォーマンスが落ちてしまうということもあるそうだ。このような話を聞くと、進路が早く決まり過ぎることによる弊害は選手、チーム両面にありそうだ。

 ただ、高部についてはまだ正式に進路を表明したわけではなく、ここからプロ志望に転じることも十分に考えられる。実際、甲子園のスタンドでは、高部の投球をブルペンから熱心に撮影するスカウト陣の姿が見られた。プロ志望となれば獲得を検討する球団は当然、多くなるだろう。新たなスター候補が今後どのような決断を下すのだろうか。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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