セ・リーグ「DH制導入」で議論が白熱…セ「3球団」で4番を打った“レジェンド打者”が抱く疑問「ファンの本音を確認したか」「なぜ来年からスタートしないのか」

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消えてしまう反対派の声

 ちなみに大谷翔平がMLBのエンゼルスに移籍し、メジャーリーガーとしてデビューしたのは2018年のシーズンだ。その時、ナ・リーグはDH制ではなかった。改めてDH制の歴史が浅いことが実感できるだろう。

「日本人は自分たちの国について『伝統を大切にする』という自負を持っていると思います。世界中のプロ野球やアマ野球がDH制を導入しても、日本のセ・リーグだけは『投手が打席に立つという野球本来の姿を伝承していく』という考え方もあったのではないでしょうか」(同・広澤氏)

 広澤氏が重視するのはファンの想いだ。記事の冒頭でセ・リーグの理事会がDH制の導入を決めたとお伝えした。つまり少数の関係者だけで話し合って決めたことになる。

「プロ野球ファンはセ・リーグのDH制導入に反対、賛成、無関心、その他、と様々な意見をお持ちでしょう。ところがニュースやネット上では賛成の声が目立ちます。なぜなら賛成派は実現して嬉しいので声を上げます。しかし反対派は決まったことに文句を言っても仕方ないので沈黙を選んだのではないでしょうか。つまりDH制導入に対して反対派は“サイレント・マジョリティー”となった可能性があります。そのことをセ・リーグはどれだけ考えていたか、極めて疑問です」

ファンの声を封印したセ・リーグ

 公的機関が規則などを制定したり改定したりする際、パブリック・コメントを募集する国は少なくない。日本でも実施されているのはご存知の通りだ。

 日本におけるパブリック・コメントの公式サイトを閲覧すると、危険物規則や建築基準法の改正について一般人の意見を募集していることが分かる。広澤氏が訴えるのも同じ問題だ。

「インターネットがこれだけ発達しているのです。セ・リーグは野球ファンに『DH制の導入についてご意見を投稿してください』と呼びかけるべきだったのではないでしょうか。本来であればファンの意見を参考にして導入するかどうかを決めるのが理想的です。たとえ理事会だけで決めるのが既定路線だったとしても、意見の公募は行うべきでした。なぜなら2025年の野球ファンはセ・リーグのDH制に賛成する人が多かったのか、反対する人が多かったのか、無関心という人の数はどうだったのか、全く歴史に残らないまま導入だけが決まったからです。ファンの声を封印し、未来に残そうとしなかったセ・リーグの姿勢は非常に残念だと言わざるを得ません」(同・広澤氏)

 さらに広澤氏は「導入は決まったのに、DH制のスタートは再来年のシーズンというのも理解できません」と首を傾げる。

なぜ再来年のスタート?

「交流戦や日本シリーズでセ・リーグの球団はDH制を経験しています。特に交流戦はシーズンの流れを変える重要な試合と位置づけられているはずです。セ・リーグの6球団は交流戦に勝つためDH制の対策を積み重ねていて当然であるにもかかわらず、スタートは再来年だと言うのです。セ・リーグの6球団はDH制に何の対策も講じてこなかったと言うのでしょうか? 実際のところ、DH制への対応といっても強打の外国人選手を探すぐらいしかないでしょう。セ・リーグには昔からDH制導入を主張してきた球団もあります。なぜセ・リーグの球団は『再来年と言わず、来年からスタートしましょう』と提案しないのでしょうか。考えれば考えるほど、残念な点が目立つセ・リーグのDH制導入になってしまったと思います」(同・広澤氏)

デイリー新潮編集部

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