セ・リーグ「DH制導入」で議論が白熱…セ「3球団」で4番を打った“レジェンド打者”が抱く疑問「ファンの本音を確認したか」「なぜ来年からスタートしないのか」
セ・リーグは8月4日、都内で理事会を開いてDH制の導入を決めた。日本初のプロ野球リーグである「日本職業野球連盟」の設立は1936年。セ・リーグ誕生は1949年。20世紀に日本プロ野球の歴史が積み上げられる中、セ・リーグでは投手が打席に立ってきた。その歴史に終止符を打った鈴木清明理事長は記者会見で「国際的な潮流を意識した」と理由を説明した。
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【写真】セ・リーグのDH制導入に「80%くらい賛成」と語った人気監督。恩師の「名将」はDH制導入に反対していた
さらに鈴木理事長は「高校野球がDHを採用することは、私にとっては大きなインパクトがあった」との感想も述べた。
さっそく大手メディアはセ・リーグの監督や選手を取材。「選手寿命が伸びる」、「投手がピッチングに専念できる」、「セの野球が守備重視から打撃重視に変わる」──などなど、好意的な受け止めを大々的に報じた。
だがXなどのSNSを見ると、導入に反対する野球ファンも意外に多いことが分かる。さらに8月7日の巨人・ヤクルト戦はDH制の観点からも議論の対象となった。担当記者が言う。
「口火を切ったのは巨人の先発・田中将大投手でした。3回裏に先頭で打席に入ると、移籍後初安打となる二塁打を放ったのです。塁上の田中投手は冷静な表情でしたが、巨人のベンチはお祭り騒ぎになりました。ところが、これで終わりではなかったのです。今度は5回表にヤクルトの先発・石川雅規投手が田中投手からヒットを放ちました。しかも、このヒットで石川投手は『新人から24年連続安打』という記録を達成。これは日本プロ野球の投手では初めてという偉業だったのです」
何しろ打者を含めても谷繁元信氏の「新人から27年連続安打」が1位であり、次の2位が石川の24年連続なのだ。
アマのDH制は歓迎
“安打製造器”の異名を持つ張本勲氏や、2215試合連続出場の日本記録を持つ衣笠祥雄氏でさえ「23年連続」であり、石川に抜かれた。
「Xでは、『DH制になるとこういうのも見られないと思うと寂しい気がする』、『DH制にはない面白さが全てが詰まったような試合』、『DH導入への牽制みたいな展開』といった、どちらかといえばDH制に否定的な意見が次々に投稿されました。野球ファンは改めて“投手が打席に立つセ・リーグ野球の面白さ”を再認識したという皮肉な結果になったのです」(同・記者)
野球解説者の広澤克己氏はヤクルト、巨人、阪神とセ・リーグの球団でプレーし、その3球団で4番打者を務めた経験を持つ。
広澤氏は「アマチュア野球のDH制導入は価値があると考えています。しかしプロ野球の場合は複雑な気持ちになるというのが正直なところです」と言う。
「DH制だと10人をスタメン出場させることが可能です。アマ野球、特に中学や高校では野球部員に出場機会を与えることは教育の観点からも重要です。そのためアマ野球のDH制は歓迎すべきことだと考えています。一方のプロ野球ですが、野球の歴史は19世紀の半ばぐらいまで遡ることができます。その当時から投手も打席に立つのがルールでした。そしてDH制を初めて導入したのはMLBのア・リーグで1973年、ナ・リーグに到ってはDH制の本格導入は2022年のことです。19世紀から始まる野球全体の長い歴史と比べると、DH制の歴史は非常に浅いと言っても過言ではありません」
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