見栄っ張りでも空回りでもいいじゃないか…「意識高い系」の若者をバカにしたツケ

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完全に「ニヒリズム」

 プロスポーツを見ても、努力の選手よりも、天賦の才の選手を絶賛するようになっている。大谷翔平だ。「二刀流」で今や世界一の野球選手になったが、その実績を天賦の才に求め、泥臭い努力をないがしろにしているのである。実際、大谷は相当努力しているだろう。

 だが、「元々才能ある人に凡人は勝てないんだよねー」というメンタリティがすっかり日本には蔓延してしまった。それは、「意識高い系」を散々叩いた2000年代中盤~2010年代前半のあの空気感が一部もたらしたのではなかろうか。

 これは完全にニヒリズムである。絶大なる才能の前に努力は太刀打ちできない――。この事実を突きつけられることは確かにあるだろう。だからと言って、様々な場所に顔を出し、なんとか人脈を広げ、バカにされながらも仕事を進行するチャレンジャーを「意識高い系(笑)」と揶揄した今から10~15年ほど前の空気感はいかがなものか。

 ネット用語には「量産型女子」や「量産型大学生」というものがある。これは、そのグループの人間がいずれも同じような服を着て、同じような髪形・メイクをしている様を嘆くもの。女性は茶髪のロン毛で花柄のワンピースを着ている。男性はダンガリのシャツをチノパンにin! といったものだ。

 だが、こうしたレッテル貼りをするオッサン・オバサンが結局は「量産型〇〇」を生み出したのだ。何しろ目立ったら「意識高い系(笑)」などと嘲笑したのだから。自らが個性と「出る杭」を否定しておいて、いざそこに従うと「最近の若者は個性がない、ウホン!」などとやるのは身勝手すぎやしないか。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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