「プロ1号」の満塁弾が幻と消えた…プロ初本塁打を巡る驚くべき“珍事集”

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ああいう感覚なんですね

 最後はNPB史上最も遅いプロ1号を記録した男を紹介する。

 プロ入り後の年数では、投手が巨人時代の工藤公康の23年目、野手が近鉄・石山一秀の14年目になるが、打席数に換算すると、日本ハム・中島卓也の2287打席目が最遅記録になる。

 2017年7月30日のソフトバンク戦、3点を追う6回に先頭打者として打席に立った中島は、カウント1-1から武田翔太の甘く入ってきた内角直球を鋭く一振。直後、綺麗な弧を描いたライナー性の打球がヤフオクドーム右翼のホームランテラスに吸い込まれていった。

「感触は良かったですね。インコースの球を頭に入れていたので、体がうまく反応してくれました。(外野手を)越えるとは思ったけど、入るとは思わなかった」と本人もビックリのプロ9年目の初本塁打だった。

 これまで最も遅いプロ初本塁打は、1998年4月12日にダイエー時代の村松有人の1566打席目。中島は村松の記録を721打席も更新し、NPB史上最も打席数を要したプロ1号となった。しかも、これが野球を始めた小学4年以来、“人生初本塁打”とあって、「びっくりしたけど、ああいう感覚なんですね」と感慨深げだった。

 この時点でロッテ・岡田幸文がデビューから2483打席本塁打なしを継続中だったが、2018年に2501打席、本塁打ゼロで現役を引退したため、中島の最遅記録は抜かれることなく現在に至っている。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘!激突!東都大学野球』(ビジネス社)。

デイリー新潮編集部

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