暴力事件で「夏の甲子園」出場辞退 大炎上!広陵問題の“根本的問題点” 甲子園出場監督やコーチングの専門家が指摘 広陵OBの本音は…!?

スポーツ 野球

  • ブックマーク

新たな悲劇、被害者を生まないために

 これに加えて、今回の騒動の背景には野球界全体が抱える問題点もある。NPB、MLBなど多くのチームで長くコーチ、トレーナーとして活動し、自身も学生時代にチーム内の不祥事を経験したことのある立花龍司氏はこう話してくれた。

「日本の野球界、スポーツの世界では暴力に対する認識が甘いところがあります。一般社会で同様のことが起これば暴行事件というものが“体罰”という言葉で片づけられる。体罰は暴力であり立派な犯罪です。その認識をもっと強く持つべきでしょう。その背景には指導者の問題もあると思います。プロでもアマチュアでもそうですが、日本の野球界は選手経験者がちゃんとコーチングを学ばないまま、指導者になることが非常に多い。そうなると体罰のような暴力を経験してきた人は、全員がそうとは言いませんが、同じような指導をしてしまう、また認めてしまうことも多いです。コーチングの手法についても一度学んだだけで十分というわけではなく、常にアップデートが必要です。そういうことを理解している指導者はまだまだ少なく、現場から暴力絡みの不祥事がなくならない大きな原因だと思います」

 繰り返しになるが、今回の騒動で大きな被害を被ったのは事案と関係のない部員や、野球部とは関係のない生徒である。広陵の出場辞退を受けて会見した大会会長の角田克・朝日新聞社社長は「暴力や暴言、いじめ、部活動での指導者と選手、あるいは選手間の理不尽な上下関係を撲滅していきたいとの姿勢を強く、改めて心に刻み大会運営を行ってまいります」と話した。

 さらに、大会副会長である宝馨・日本高野連会長(京都大学名誉教授)も「今回のような事案をきっかけに、改めて暴力を一切認めない姿勢を全国の加盟校に強く求めていきたいという風に思っております」と会見の冒頭で語っている。

 新たな悲劇、被害者を生まないためにも、野球界全体が、今回の事案を受けて、あらゆる問題を改善していくことを望みたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。