【“沸騰”不動産の対処術】湾岸エリアの価格下落で「ローン破綻もあり得る」 “外国人不動産規制”で起こる「高騰マンション」への副作用
ペーパーカンパニーを通じて物件購入
現在、都内マンションは平均的なサラリーマンが年収の18倍もの額を出さないと70平米の1室を買えないという異常事態にまで至っている。
三菱UFJ信託銀行が発表したデベロッパーへの聞き取り調査では、千代田区・港区・渋谷区の新築マンション購入者の2〜4割は外国人だったという結果が出ています。
非居住者の外国人が日本の不動産を投資目的で買う際には、都内のペーパーカンパニーを通じて購入する場合や、日本人が名義貸しをするケースもある。また、大手のデベロッパーがマンションをまとめて中堅以下の不動産会社に売り、その会社が外国人に販売することもある。こうなると、デベロッパーも外国人の不動産購入を捕捉しようがないので、実際にはこれよりもさらに多い可能性もあります。このような日本の不動産を投資対象とする外国人の存在が価格を押し上げる一因になっていると言えます。
いわゆる、都心六区(千代田区・中央区・新宿区・文京区・渋谷区・港区)の区分所有マンションは外国人の間でも人気です。特に港区などの湾岸エリアでは日本の不動産関係者が思うよりも高く買われている印象です。やはり、湾岸エリアは津波や地震のリスクが高いといった、地理的・歴史的な背景に外国の方はなじみが薄いということが関係しているのだと思います。
外国人不動産規制で生活破綻も
外国人の不動産売買規制は、在留外国人と非居住者の外国人で分けて考えるべきです。価格高騰への影響は主に後者によるところが大きい。日本に住んで納税も行う在留外国人は日本人と同等の権利を認める、投資目的の非居住者の外国人には規制を設けるといった形で進めることが必要でしょう。
実際に規制を行う場合、現実的な手法として挙げられるのは不動産にまつわる税制の改正です。
シンガポールでは、不動産売買契約時にかかる印紙税を物件価格の60%に設定しています。つまり契約時には物件価格の1.6倍を支払わないといけない。物件転売だけを目的にした購入はここでかなり防ぐことができます。例えば、非居住外国人の不動産売買時は印紙税率を高く設定するといった方法は税率を変えるだけで実行できるため、転売による価格高騰を抑える簡便で確実な方法になります。さらに、この方法は売買時点で実行できるので、未納も防ぐこともできます。あとは、かつて平成バブルの際に当時の大蔵省が実際に行った手法として、超短期不動産譲渡税の導入があります。この税制では2年以内に不動産売却した場合、個人で所得税50%と住民税15%、法人で法人税率プラス30%という重い税率を課していました。例えばこれを時限立法で復活させれば、投機的な物件転売を抑える強力なブレーキになると思います。
国民民主党をはじめ政界では、このような規制策について議論が高まっているところではありますが、ここには少し気を付けないといけない点があります。
規制が行われてマンション価格が落ち着くのはいいですが、これにより外国人投資家以外の既存の在住者への影響が想定されます。今後利上げが予想される中でローン返済額が上がり、さらに物件価格も下がるとなると、高騰したマンションを背伸びして購入した人の中には返済に苦しみ生活破綻してしまう層が出かねません。
先に述べたとおり、湾岸エリアなどは外国人投資家の影響などにより実態以上に価格が吊り上がってしまっている傾向にあります。今後規制が行われた場合、このようなエリアでは下落幅が大きくなる可能性があることに留意が必要です。
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