沖縄不在のジャングリア やんばるの自然に「恐竜オブジェ」では勝てない…それでも感じたポテンシャル

  • ブックマーク

「恐竜のオブジェ vs 沖縄の大自然」

 今回の沖縄旅行では、北谷のアメリカンビレッジや那覇の国際通りなど、定番の観光地を訪れたほか、やんばるの森に広がる豊かな自然、南国のリゾート感あふれるビーチの数々にすっかり魅了された。

 ジャングリア沖縄は、たしかに“沖縄活性化の目玉”とされるだけの注目度を集めていたものの、集客という視点でライバルを考えると、やはりこうした本来の沖縄が持つ圧倒的なポテンシャルには勝てないのではないか。「恐竜のオブジェ vs 沖縄の大自然」――そんな構図がふと頭をよぎったのも事実だ。

 ジャングリア沖縄には、国の官制ファンドである「クールジャパン機構」から80億円という巨額の融資が行われている。1年目は、美ら海水族館の年間来場者数360万人に対して100万人の動員を目標にしており、その規模であれば一定の利益が出る収支計画になっているという。

 だがもし今後、想定よりも低調に推移した場合、“税金の無駄遣いだった”という批判にさらされかねない。だからこそ、少しでも興味を持った人には、ぜひ早いうちに足を運び、現地で実際に体験して、応援してもらいたいと強く感じている。

地方創生エンタメへの期待

 筆者自身は2つしかアトラクションを体験できなかったものの、それぞれの完成度は高く、内容としては楽しめるものだった。「自然を活かした体験型アトラクション」というのはテーマパークの新機軸にもなりそうで、たとえばスキー場の跡地やゴルフ場の跡地など全国の余剰地に展開することもできるだろう。ジャングリアの成功は、地域活性化の有力なモデルケースになる可能性もある。そう考えると、「地方創生型エンタメ施設」の先駆け、パイオニア的な存在になっていくのではないかという期待すら抱いている。

 ちなみに、筆者が2月に建設現場を取材した段階(別記事「観光閑散期『冬の沖縄』に変化の兆し 『プロ野球キャンプ』に続く期待のキラーコンテンツとは」参照)では「大阪・関西万博のようにオープンに間に合わないのでは?」という声も一部で囁かれていた。そこはさすが民間主導のプロジェクト。きっちりとスケジュール通りにオープンまでこぎ着けたことには、素直に敬意を表したい。

 この夏は大阪・関西万博とガチンコ勝負となっている。噴出している様々な課題をスピード感をもって解決し、末永く来場者を楽しませて欲しいと思う。

 ***

 前編記事「『恐竜は良かった』でも『乗れたの2つだけ』計6.5万円のジャングリア沖縄 行くなら『美ら海』より先にすべき」では、行かない人も読んでおきたいリアルな体験レポートを紹介している。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト、流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務などの活動の傍ら、全国で講演活動を行っている(依頼はやらまいかマーケティングまで)。フジテレビ「FNN Live News α」レギュラーコメンテーター、TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。