沖縄不在のジャングリア やんばるの自然に「恐竜オブジェ」では勝てない…それでも感じたポテンシャル
消費経済アナリストの渡辺広明氏は、賛否両論の「ジャングリア沖縄」をオープン5日目に訪問した。【記事前編】では、長時間の待機の末に乗れた2つのアトラクションなど園内の様子をレポートし、おおむね「楽しかった」と語る。だが一歩引いた視点に立つと、改善すべき点と更なる可能性を発見したようだ。(前後編の後編)
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【写真】「なんで大金はたいてこんなことを…」 ジャングリア沖縄、著者の恐怖体験アトラクション ほか
ジャングリア沖縄は、もともとゴルフ場だった土地に造られたテーマパークということもあり、筆者としては「やんばるの森」を五感で味わったという実感には乏しかった。加えて、沖縄観光の最大の魅力とも言えるマリンブルーの海がパーク内からは一切見えず、空間全体から“沖縄らしさ”があまり感じられなかったのは、はじめは残念に思った。
だが、よく考えるとジャングリア沖縄は、そうした本来の沖縄観光とは異なるアプローチで、「+αの体験」を提供する、新たな観光拠点であるべきなのかもしれない。
ジャングリアは、インバウンド観光客をメインターゲットにしている。筆者が行った日もおよそ4割ぐらいがインバウンド観光客で、その点に関しては順調な滑り出しに見えた。ただし、課題は那覇空港や那覇中心地区からの距離。レンタカーでは順調に行っておよそ1時間40分ほどで、沖縄北部のホテル宿泊などの地域活性化には繋がるものの、観光客にとっては少しばかり遠く感じるのは間違いない。
立ち上げを主導したマーケティング会社「刀」の森岡毅CEOによると「飛行機で3~ 4時間圏内の20億人」のアジアの巨大商圏をターゲットにしているという。彼らの移動を想定してみると、例えば空港に着いてからレンタカーに乗るまでが1時間から1時間半。そこに現地まで1時間40分をプラスすれば3時間前後となる。そう考えると、飛行機で那覇空港に午前に到着し、夕方まで営業のジャングリア沖縄を十分に楽しむのは難しそうだ。
そのため近隣の「美ら海水族館」ととともに、どんな宿泊滞在プランを提示出来るかが今後の肝となりそうだ。また距離的にリピートしづらい立地である事を考えると、1度来れば長く楽しめるよう、ナイトマーケット的な営業時間延長などの検討も今後は必要となりそうだ。
「高すぎる」地元民の意見
地元の方々はジャングリアをどのように受け止めているのかを知りたくて、居酒屋やガールズバー、スナック、さらにはコンビニの店員さん約20名に「ジャングリア、行ったことある?どう思う?」と声をかけて回った。主に以下のような意見が返ってきた。
・沖縄の人は行列や渋滞がとにかく苦手だから、落ち着いてから行きたい。
・強い日差しやスコールを避けられる場所がないのは厳しい。
・入場料や施設全体の価格設定が高すぎる。
・小さい子どもがあまり楽しめる内容ではない。
といった意見が大半を占めた。中には「近くの恐竜パークなら入場料1,000円で十分楽しめるよ」と、価格帯への反発がうかがえた。こう書くと厳しく見えるかもしれないが、口調はどちらかというと「今はまだ行かないけど、うまくいったら行ってみたいね」というトーンで、“温かい静観”とも言えるものだった。
しかしながら、ジャングリアの誕生で雇用は増えたが、沖縄北部の単身マンションの家賃が43%アップ(不動産情報サービスアットホーム調べ)したとの調査もあり、家賃高騰の問題も発生しているようだ。今後、来場者が定期的に訪れることでトラブルも増えるだろう。現地の理解を得るにこしたことはなく、沖縄県民割や沖縄DAYなどを実施し、県内のファンも増やす事が必要な気もする。
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