名優の最強タッグ…前評判が高かった「しあわせな結婚」の視聴率が伸び悩んでいるワケ

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謎解き泣かせの筋書き

 ネルラは第3回、重要なことを思い出す。気絶から目覚めると、布勢は血を流して倒れていた。既に死んでいたのだろう。そのとき、男性と思しき足を見た。

 現場は寛の所有する建物だ。また、考、弟でデザイナー兼スタイリストのレオ(板垣李光人)も合いカギを持っている可能性が高い。それを暗示するため、2人が原田とネルラの部屋のカギを持っていることを第3回で強調したのだろう。

 原田とネルラは寛の所有するマンションの2階に住んでいる。1階はレオ、3階が考、4階が寛の住居である。おそらく全員が全室のカギを持っているのだろう。謎解きをしようとする側を泣かせる設定である。今後、証拠物などの移動が簡単に出来てしまう。

 ネルラの長弟の死も物語を入り組ませている。長弟が6歳のとき、ネルラと考が海水浴に連れて行ったところ、溺死した。婚約者殺しに関係があるのか、ないのか。あるいは鈴木家全体の秘密につながるのか。全く無関係なら、こんな設定はつくらないだろう。観る側としては悩ましい。

 長弟と布勢の死によってネルラは心を閉ざしたというものの、どこまで本当なのか分からないところも推理を難解にしている。第3回、寛の郷里である京都府舞鶴市に家族旅行に出掛けたところ、ネルラはホテルのカラオケで「夢見る少女じゃいられない」(1995年)を誰よりもノリノリで歌った。どこから見ても陽気で開放的な人だった。

 観ている分には楽しかったが、ネルラの人格がよく分からない。天然キャラは謎解きの天敵なのだ。

 配役は万全。だが一点だけ序盤の視聴率を下げた要因と思われることがある。阿部と松は5年前、同じテレ朝「スイッチ」で共演した。坂元裕二氏(58)作の大人のラブストーリーで、それぞれ検事と弁護士に扮した。放送後もNetflixで大ヒットした。

 同じ作風になると誤解した人もいるのではないか。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部

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