名優の最強タッグ…前評判が高かった「しあわせな結婚」の視聴率が伸び悩んでいるワケ
普通に考えると犯人は
ネルラは面識のない原田に紙袋を唐突に手渡した。「あげます」。原田が中を開けると、現金数万円と「父がお世話になりました」と書かれたメッセージなどが入っていた。
医師にお礼として渡す予定だったらしい。それを見ず知らずの原田に渡すのはおかしい。ネルラは最初から原田と知り合いたかったのではないか。結婚まで目論んでいたのかも知れない。原田は検事出身の腕利きだ。自分の容疑を晴らしてほしかったのではないだろうか。
のちに登場するネルラの父親で元缶詰メーカー社長の寛(段田安則)も病み上がりに見えない。病気の話もしない。本当に医師に世話になったのか。ますます原田との出会いはネルラの意図に思えてしまう。
当の原田はネルラに一目惚れしたから、そんなことはちっとも頭になく、彼女にLINEをせっせと送る。ネルラと出会う前は「人間は所詮1人です」と独身主義を決め込んでいたものの、コロリと人が変わってしまった。
退院もネルラにLINEで前日に知らせた。するとネルラは病院前で待っていた。
「来ました、お迎えに。あの、ウチ来ませんか」(ネルラ)
そして2人は瞬く間に結ばれる。結婚までのプロセスは大胆なまでにカット。サスペンスだから不要なのだろう。
普通に考えたら、この結婚はネルラによる策略である。ところが、ネルラの人物像を考えると、衝動的に紙袋を渡した可能性も捨てきれず、それもこのドラマを難しくさせている。
ネルラはクロワッサンにガブリと食らいつき、パンくずを盛大にまき散らしても気にしないような天然キャラなのだ。天然キャラは何をやっても許されるので、サスペンスにおける謎解きをややこしくする。
第2回では2人の結婚が寛とネルラの叔父でゴルフのティーチングプロ・考(岡部たかし)による企みである可能性も浮上した。
寛はワンマンだったために缶詰メーカー社長の座を追われたが、その悶着の処理に当たった弁護士が嫌なヤツだったため、弁護士嫌いになった。原田のことも気に食わない。だが、考が静かに言った。
「ネルラが明るくなったから、いいでしょうよ。ネルラにはこの男が必要だ」
意味深な言い方だった。まるで原田は鈴木家にとって必要なコマだと言わんばかり。この言葉を寛は驚いたような表情で聞いていた。
2人の結婚はネルラの策略か、それとも寛と考の画策か、あるいは鈴木家全体の作戦なのか。もしくは自然なことだったのだろうか。
婚約者を殺した犯人を推理する前に、原田とネルラを引き合わせた人物を考えなくてはならないのだから、厄介である。これは小さなことではない。2人の結婚を主導した者がいるとするなら、婚約者殺しの真相も知り得るはずだ。
それでいながら、第3回までで婚約者殺しの犯人の目星は付いている。異例の筋書きだ。ドラマを観ている人なら同じ考えのはずで、ネタばらしにならないだろうから、書かせてもらう。現時点までの材料で普通に推理したら、鈴木家の誰かが犯人である。
事件が起きたのは2010年8月13日。被害者は画家の布勢夕人(玉置玲央)。ネルラの美大の同級生で2人は結婚の約束をしていた。現場は布勢のアトリエだが、それは寛の所有する倉庫である。
当初は2階から階段伝いに落ちての転落死と見られたものの、頭部に打撲傷が2つあったため、転落では説明が付かないことが分かる。ネルラが犯人と疑われたが、「やってない」と否定した。そもそも事件当時の記憶の大半がなかった。
第2回。ネルラはおぼえていることを原田に打ち明ける。布勢は当時スランプで、ネルラに「一緒に死んでくれ」と迫った。
「嫌だって言ったら暴れ始めて。私を道連れにしようとする布勢が憎いと思った」(ネルラ)
布勢がネルラの首を絞めたから、2人は揉み合いになり、ネルラは気を失った。
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