阪神ファンも騒然…創成館の小さな“森下翔太”が、夏の甲子園で13奪三振の大熱投 開幕戦で小松大谷を撃破!

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再びの快投に期待

 そんな森下だが、身長170cm、体重68kgと、決して恵まれた体格ではない。バッテリーを組む捕手の山下翔(3年)も「入学した時はまさかエースになるとは思わなかった」と話しているように、早くから評判が高い投手ではなかった。

 昨年の夏の甲子園でもベンチ入りメンバーからは外れており、秋の新チーム発足当初も控え投手。試合に出ても、いい投球をして、ゲームを作ることができなかったという。

 ようやく頭角を現してきたのは春の九州大会。初戦でエナジックスポーツ(沖縄)に1対2で敗れたが、リリーフで登板した森下は3回2/3を投げて被安打1、四死球0、6奪三振で無失点という見事な投球を見せた。

 ストレートの球速は、筆者のスピードガンによる計測で、最速145キロをマークした。視察していたスカウト陣も、その投球に驚いた様子を見せていた。

 春からの成長を感じさせたのが、変化球と投球術である。1回にストレートをとらえられてタイムリーを浴びたこともあって、3回からは変化球を中心の組み立てに変更した。

 配球は、捕手が出したサイン通りに首を振らずに投げていたとのことだったが、そのような要求にしっかり応えられる点をみても、技術の高さがあるからだ。走者がいない場面でも、あえてクイックで投げるケースも見られ、ボールだけではなく、フォームにも変化をつけて、打者を翻弄していた。

 相手の小松大谷では、U18侍ジャパン強化合宿に召集された田西称(3年・三塁手)がプロ注目の強打者だったが、4打数ノーヒットに抑え込んだ。第3打席では、それまであまり投げていなかったフォークで三振を奪うなど、投球の幅の広さも見せている。

「トレーニングにもしっかり取り組んでいて、手を抜くことなくフォームを安定させることをしていたので、変化球もコントロールもどんどん良くなっていると思います」(前出の山下)

 体格に恵まれていないことは、森下本人も意識しているそうで「上背がなくても甲子園の舞台でこれだけの投球ができることは証明できたと思います」と語っていた。この言葉は、全国の小柄な球児や野球少年に勇気を与えている。2回戦は、優勝候補の神村学園(鹿児島)と激突する小さな“森下翔太”。再び快投を見せてくれることに期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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