今市隆二が見せた怖過ぎる「ウラの顔」 ギャップ売りタレントが抱える「あるリスク」とは

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

 三代目 J SOUL BROTHERSのボーカルであり、ソロでも活動中の今市隆二が、タクシーの運転手を「殺すぞ」などと脅した上、暴行を加えたとして、書類送検された。ライターの冨士海ネコ氏は、今市氏のように「ギャップ」をウリにするリスクを指摘する。

 ***

 見た目はオラオラでも中身は紳士――これが、ファンが今市氏に抱くイメージだった。多くのタレントは、そうした「見た目と中身のギャップ」を最大の武器としてきた。だが、その武器は今や、振りかざせば自らを傷つける「もろ刃の剣」となりつつあるのではないか。

 7月末、今市隆二氏が、タクシー運転手に対して暴行と脅迫を働いたという報道が波紋を呼んだ。記事によれば、走行中の「ぶっ殺すぞ」といった脅し文句や高圧的な言動が記録されている。所属事務所のLDH公式サイトは8月1日に謝罪コメントと当面の活動自粛を発表。被害者側の弁護士事務所によれば7月末の時点で示談交渉は成立していないといい、事態の深刻さにネットニュースのコメント数は5000に迫る勢いを見せた。

 この一件が与えた衝撃の大きさは、単なる「不適切行動」以上の意味をもっているだろう。今市氏はこれまで「見た目はワイルド、中身は爽やか」というギャップ戦略の象徴のような存在として支持を集めてきたからだ。

 LDH系グループに代表される「見た目はこわもて、中身は礼儀正しい好青年」というギャップは、2000年代後半から2010年代にかけて、バラエティーやCM、さらにはさまざまなアンバサダーにも進出できる万能キャラとして機能してきたといえる。舞台ではカッコつけているが、メンバーとの飲み会ではレモンサワーという庶民的な一面も、女性だけでなく男性からの支持を集めていた。黒っぽい衣装から鍛え上げられた肉体を見せつけるような見た目の「怖さ」はストリートの信頼を得るために、内面の「誠実さ」はマス向けの安心感を担保するために用いられてきたはずだ。

 同様の「ギャップ」構造は、女性芸能人にも当てはまる。「清純派」として登場した女性アイドルや女優が、次第に「酒豪」「意外と男っぽい」「中身はおっさん」といったキャラ転換を図ることで、同性からの支持や共感を得ていく戦略は長年スタンダードだった。ところが、こうしたギャップ戦略が裏目に出ることも多くなった。

 例えば、「1000年に1人の美少女」としてブレイクした橋本環奈さんは、その清楚な見た目にそぐわないガハハ笑いや酒豪っぷりでも人気を博した。ただ今年はマネージャーへのパワハラ疑惑も報じられたことで、「男っぽい性格売りだけど、実際はただの無神経な人なのでは」と、彼女の持ち味である「豪快さ」に対して反発の声も上がっている。

 また広末涼子さんのように、楚々とした見た目と違い実は活発です、と主張する女優が不倫スキャンダルを起こすケースもよくある。彼女の場合はメンタルの問題があったと後日報じられたが、不倫発覚当初は「活発」ではなく「傍若無人」と捉えられ一気に信頼を失った。ギャップがもたらす期待値は、裏切られた瞬間、倍の失望として跳ね返ってくるのだ。

 今市氏も同様である。普段は柔らかな口調や優しい笑顔でファンを魅了していた人物が、報道で突如「別の顔」を見せたとき、その衝撃は何倍にも増幅される。なぜなら、ファンは彼の「見た目からは計り知れない」爽やかさや誠実さを信じていたからだ。そして、その信頼は、所属事務所やメディアが時間をかけてつくり上げてきたものでもある。

 つまり、芸能人の「キャラ」とは一種の公共物であり、その整合性は多くの関係者の努力や投資の上に成り立っている。従って、一度破綻すれば損失は計り知れない。見た目と中身のギャップに頼り過ぎる構造には、すでに限界が来ているのではないだろうか。

次ページ:「キャラ」は資産でもあり呪い ギャップ戦略を終わらせた韓国アイドル育成システムの普及

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。