「ガキの使い」なんて言い方は…G阿部監督の懲罰的コメント、Bクラスの可能性もある緊急事態の今は控えるべき【柴田勲のコラム】

  • ブックマーク

川上哲治さんならどう話すか

 こんな状況である。阿部監督にはもっと鷹揚になってほしい。前回も記したが、エラーやミスをした選手に対し感情的になり怒ってはダメだ。

「守備がだらしない。使っているのはオレだから申し訳ないけど、井上のベースカバーを含めてガキの使いじゃないから」

 7月31日の中日戦、延長10回サヨナラ負けを喫した試合後の談話だ。5回に無死一塁で先発の井上が一塁ベースカバーを怠り併殺を逃し、延長の10回にはこの日、再昇格していた二塁の湯浅大がのけぞって落球、サヨナラ負けのきっかけとなった。試合は4失策と守備が乱れた。

 阿部監督は湯浅に関しては「ドームでフライ捕れないんじゃ、どこで捕るんだって話だから」とも。

 川上(哲治)さんならどう話すか考えた。おそらく「へたくそだなあ。使ったオレが悪いんだ」で終わったと思う。

「ガキの使い」はない。こんな言い方は控えた方がいい。まるで選手に責任を押し付けるようなコメントだ。懲罰的な意味合いを持つし、実際に井上はこの日登録を抹消された。第一、何度でも指摘するが選手たちは委縮する。特に若い選手はそうだ。

 緊急事態のいまだからこそ、阿部監督は選手たちに伸び伸びと明るくやらせる環境をつくってやるべきと思う。

なぜ坂本勇人を使わない

 最後になるが、阿部監督が砂川リチャードをなぜ三塁で使っているのか。分からない。

 見ていると打撃観とか野球観を感じることができない。ボールが来た。見逃した、振った、打った、三振した。どうしてこの球を見逃したのか、どうして振りにいったのか。その意図が見えない。そりゃ、あれだけのパワーだ。当たれば飛ぶ。

 明るい性格でチームを盛り上げているのだろうが、打率1割4分3厘では……せめて2割4分から5分くらいは打ってほしいところだ。

 リチャードを使うなら増田陸を三塁で使い、大城卓三を一塁で起用すればいい。

 もっと言うならなぜ坂本勇人を使わない。「昔の名前で出ています」ではないが、あれだけの実績を持った選手だ。自軍内の都合ではなく、相手チームがどう思うのかを考えるべきだ。そりゃ、坂本の方が嫌なはずだ。

 いずれにせよ巨人は緊急事態に突入している。5日からの9連戦をしのいで2位を死守してほしい。首位・阪神に肉薄してと言えないのが寂しいところだが。

(成績などは4日現在)

柴田 勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会理事を務める。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

  • ブックマーク

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。