「気づいたら自宅の隣に外国人だらけのゲストハウスが…」 自治体が頭を悩ます訪日外国人が「半期で2000万人」時代のオーバーツーリズム」対策とは

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飛騨市のきっかけは「あの映画」だった

 高山市に隣接する飛騨市も、外国人宿泊客数は9310人(2023年)から1万2247人(2024年)へと着実に増加している。ただ、数字上のインパクトは高山市ほどではない。

「宿泊施設の総定員数は、高山市の約2万人分に対して、当市は約2000人分。そもそも受け入れのキャパシティが比べものにはなりません」

 同市の観光政策を担う、一般社団法人飛騨市観光協会事務局長の齋藤由宏氏は、そう謙遜して笑う。ただ、白川村や高山市で深刻化するオーバーツーリズムの問題、ひいては忍び寄る「まちの未来」への危機は、飛騨市にとっても対岸の火事ではないだろう。その点を尋ねると、齋藤氏から返ってきたのは意外な答えだった。

「確かにそうですね。でも、当市で優先して取り組んでいることが二つあります。ひとつは関係人口を増やすこと、そして『インナー』の強化です。その二つが、長期的にはオーバーツーリズムへの最も有効な備えになると考えています」

 地域に関わる人々を増やす「関係人口の強化」と地元住民という「インナー」へのアプローチ。この2つがなぜ、オーバーツーリズムへの備えになるというのか。そもそも、観光客を増やすのが仕事のはずの観光協会が、なぜ「インナー」を重視するのか――。

 その謎を解くために、時計の針をいったん9年前の2016年に戻す。この年、ある映画が社会現象といえるほどの大ヒットを記録したのを覚えているだろうか。そう、『君の名は。』だ。

 日本のみならず世界で記録的な興行収入を打ち立てたこの作品の舞台のひとつが、実は飛騨市で、人口約2万1000人の小さな町に、かつてないほど多くの観光客が集まるようになったのだ。

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 有料版「【インバウンドの光と影】訪日外国人が『年間4000万人』時代に町は何を“防波堤”にすべきか――『君の名は。』で注目された岐阜県飛騨市に学ぶ『オーバーツーリズム」対策の本質」では、『君の名は。』で多くの観光客が集うようになった飛騨市が取り組んだ対策をご紹介する。

堀尾 大悟(ほりお だいご)
ライター
慶應大学卒。埼玉県庁、民間企業を経て2020年より会社員兼業ライターとして活動を開始し、2023年に独立。「東洋経済オンライン」「プレジデント」「Japan Innovation Review」「NewsPicks」などビジネスメディアを中心に執筆。ブックライターとしても活動している。

デイリー新潮編集部

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