石破首相は「体力的にもう限界」だが取材には「行きつくところまで行くしかない」 退陣を報じた2社が“出禁”になる異常事態も

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“辞めるに辞められないな”

 官邸関係者が打ち明ける。

「石破首相の気持ちが、続投と退陣の間で揺れ動いているのは事実です。8月1日の関税交渉の期限までになにも成果を上げられなければ、本人も辞める腹づもりではいたようです。とはいえ、周知のとおり関税交渉が急転直下まとまり、状況が変わったわけです」

 読売は関税交渉という“懸案に道筋が付いた”点を退陣理由の一つに挙げている。しかし、実情は逆で交渉の成果が上がったのだから、首相の座にとどまっても問題ない、と判断した可能性があるという。

「今年は戦後80年の節目です。8月は広島平和記念式典(6日)、長崎平和祈念式典(9日)、全国戦没者追悼式(15日/終戦記念日)などの式典がめじろ押し。石破首相は太平洋戦争の歴史認識に踏み込む公式的な“談話”の公表は見送るものの、“見解”を発表する準備を進めています。こうした事情も、続投にこだわる動機になっているとみられています」(前出のデスク)

 また、先の関係者は別の特別な事情もあると語る。

「8月20日からの3日間、横浜で第9回アフリカ開発会議(TICAD)が開かれます。石破首相は7月18日にベッセント米財務長官と面談した際、同席した米国政府高官からTICADの外交及び安全保障上の意義を説かれており、その重要性を認識しています。首相は“TICADを終えるまでは辞めるに辞められないな”とも周囲に語っています」

「周辺」の取材で号外を?

 読売に石破首相自身が報道を否定している件に関して尋ねたところ、書面で以下の回答があった。

〈(参院選の結果を受けて)首相周辺を取材しました。石破首相は7月22日夜、周辺に自身の進退について、▽参院選で過半数を維持できなかったため、引責辞任する▽引責辞任はするが、日米関税協議のめどがつくまでは対外的に表明することはできない▽日米関税協議に関し自身の訪米も含め日米首脳会談を模索する必要があるほか、重要な外交日程である8月20~22日の「第9回アフリカ開発会議(TICAD9)」までは続投する可能性がある――などの考えを伝えました。米国との関税交渉の合意が発表された23日に改めて確認したうえで、報道しました。〉

 読売は「周辺」の取材で号外まで打ったということになる。

 政治ジャーナリストの青山和弘氏はこう明かす。

「自分が直接取材した限り、石破首相は“辞任するなんて絶対に言ってない”と強く否定しています。また私には同時に、“こうなったら行きつくところまで行くしかない”“これは自分との戦いでもある”とも語っていました。自分が関税交渉を妥結したのだから、責任を持って合意内容を実現したいとの思いを強く持っているのです」

 石破首相は続投に意欲を示しているものの、退陣包囲網は確実に狭まっている。

 後編【首相の椅子にしがみつく姿は「東條英機元首相をほうふつとさせる」 石破おろしの中心メンバーとは】では、党内での「石破おろし」について、全舞台裏を詳しく報じる。

週刊新潮 2025年8月7日号掲載

特集「展望なき『石破おろし』で自民党の断末魔」より

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