広瀬すず、長澤まさみ、河合優実…実力派女優の若さがきらめく「部活映画」で青春をチャージする【夏休み映画案内】

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映画制作にかけるひと夏の青春ファンタジー

〇「サマーフィルムにのって」(2021年)

 高校3年生のハダシ(伊藤万理華)は時代劇映画を愛する映画部員だ。ある夏の日、自身の映画の武士役にぴったりな少年・凛太郎(金子大地)と出会う。幼なじみのビート板(河合優実)とブルーハワイ(祷キララ)を巻き込み映画制作に乗り出すが、凛太郎には未来から来たタイムトラベラーという秘密があった。

 本作の最大の見どころは彼女たちの映画制作にかける熱意だろう。劇中ハダシが「(映画は)スクリーンを通して過去と未来をつなげられる。私の映画で未来につなげたい」と語るシーンはまさに「青春の情熱」だ。そのハダシは勝新太郎を熱愛し、座頭市のモノマネが得意。「椿三十郎」「大菩薩峠」「眠狂四郎」など映画好きにはたまらないタイトルもたくさん出てくる。

 また、河合優実が演じるビート板が、筒井康隆の『時をかける少女』やハインラインの『夏への扉』の文庫本を読んでいるシーンもある。いずれもタイムトラベルを扱ったSF小説。このシーンで“時代劇とタイムトラベル”という、本作のテーマをさりげなく表現していることにも注目したい。

 元乃木坂46の伊藤万理華は卒業後に女優をメインとして活動、本作でいくつもの新人賞を受賞した。河合優実は同年に公開された「由宇子の天秤」の演技でも高く評価され、本作との2作でヨコハマ映画祭最優秀新人賞などを受賞。その後の活躍はいうまでもないだろう。

内面の苦悩をにじませる役に挑戦した上野樹里

〇「奈緒子」(2008年)

 長崎県波切島に療養で訪れた12歳の奈緒子(上野樹里)。奈緒子が船から転落したとき、助けようとした雄介(三浦春馬)の父が命を落としてしまう。ずっと責任を感じていた奈緒子は数年後、有数の長距離ランナーとなった高校生の雄介と再会する。陸上部のマネージャーを頼まれた奈緒子は、駅伝長崎代表を目指す雄介に寄り添うことを決意する。

 上野樹里は部活映画の「スウィングガールズ」(2004年)で一気に人気を得た。その後も多くの主役を務めたが、どれも明るいコメディ的な作品だ。しかし、本作に上野が笑うシーンはほとんどなく、自分のせいで起きた事故のことを今でも悩み、亡くなった男性の息子を気に掛ける奈緒子の心情を見事に演じている。

 もう一人の主役・三浦春馬はこの時17歳。前年に新垣結衣と共演した「恋空」(2007年)が大ヒットし、一気に人気が出た時期だった。その三浦のライバル役のエリートランナーに綾野剛。三浦との駅伝レースのマッチアップでは、束ねていた長髪を振りほどき走る姿が注目だ。勝負の行方はぜひ作品を見てほしい。

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