「大の里」は来場所に期待、問題は「豊昇龍」…優勝「琴勝峰」は“体の張り”が抜群だった【音羽山親方の名古屋場所総括】
2021年3月場所で現役を引退し、2年後の12月に東京都墨田区内に音羽山部屋を創設した71代横綱・鶴竜こと音羽山親方。2025年6月には念願だった土俵開きをおこない、支援者たちに新しい部屋を披露した。現在は、大関復帰を狙う関脇・霧島を筆頭に10人の弟子の指導にあたっている。今年春場所から審判部に異動し、本場所中は毎日、勝負審判として土俵下で厳しい目を光らせるようになった親方に、名古屋場所の土俵をあらためて振り返ってもらった。
平幕力士の健闘にうれしい驚き
――会場が60年ぶりにドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)から変更となり、新会場IGアリーナのこけら落としとなった、名古屋場所。連日満員御礼の中で、力士たちは熱戦を繰り広げましたね!
音羽山:新しい環境の中で、力士たちも「いい相撲を見せたい」という気持ちが強かったと思います。大の里が新横綱に昇進して、豊昇龍とともに、東西に横綱が揃ったのですが、前半戦から優勝戦線を引っ張ったのは、安青錦、琴勝峰、草野らの平幕力士だったのは、意外でした。
今場所の体の張りが抜群だった琴勝峰
――千秋楽は、2敗の琴勝峰関と3敗の安青錦関との直接対決。それを制した琴勝峰関は初優勝となりましたが、終始落ち着いた相撲を見せていましたよね。
音羽山:琴勝峰は埼玉栄高を経て、20歳という若さで幕内に上がったホープの1人でした。私も「いい体をしている力士だな」と注目していましたが、ケガが多くて十両に下がるなど、伸び悩んでいたんです。しかも、今場所前は、太ももを痛めて、相撲の稽古はほとんどできていなかったんですよ。
実戦稽古ができない分、トレーニングなどに力を入れたのでしょう。今場所の体の張りが抜群。これは普段から稽古、トレーニングをしている証拠です。私も経験があるのですが、力士はどこかを痛めている時のほうが、相撲に集中できて、いい成績を残せることがあるものです。
2年前の初場所、大関・貴景勝(当時)と千秋楽まで優勝を争った経験も生きたと思いますし、もともと実力がある力士。実弟・琴栄峰が入幕したことも、刺激になったんでしょうね。
安青錦は体を一回り大きくする必要あり
――惜しくも優勝を逃した安青錦関について、親方は以前から「前傾姿勢の相撲がすばらしい」と絶賛されていました。
音羽山:対戦相手にしてみれば、安青錦は本当にイヤな存在だと思いますよ。名古屋場所では前頭筆頭に番付を上げて、上位陣と総当たりを経験しましたが、その地位で11勝、技能賞を受賞したのは、実力が付いてきた証拠です。
ただ、敗戦した最後の2番(14日目・草野戦、千秋楽・琴勝峰戦)で、課題も見えてきました。体の大きな相手に圧力をかけられて攻められると、小柄(182センチ、138キロ)なので、足を運べない。今後は、体を一回り大きくすること、特に足腰を大きくする必要があるでしょうね。
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