「大の里」は来場所に期待、問題は「豊昇龍」…優勝「琴勝峰」は“体の張り”が抜群だった【音羽山親方の名古屋場所総括】
草野は今年中にも三役昇進か
――新入幕の草野関が11勝、若碇改め藤ノ川関が10勝で、共に敢闘賞を受賞しました。
音羽山:草野は日大相撲部で実績を積んで、角界に入ったわけですが、本来の実力を考えれば幕内に上がってくるのが遅いくらいです。正統派の相撲も取れるうえに、多彩な技を持っている。13日目の霧島戦で見せた外掛けなんか、絶妙なタイミングで決まって、身体能力が高いことが見て取れました。体のバランスもいいし、これからも今場所のような前に出る相撲を取っていけば、今年中に三役には上がるのではないでしょうか?
藤ノ川(176センチ、117キロ)は、まだ20歳。小柄な体で、精一杯土俵をかき回していましたね。お父さんの甲山親方(元幕内・大碇)も技巧派でしたが、気持ちの強さを武器に、これからも幕内の土俵で暴れてほしい存在です。
大の里は来場所に期待、問題は豊昇龍
――さて、新横綱・大の里関が平幕力士に4敗。最後まで優勝に絡むことなく、新横綱の場所が終わってしまいました。
音羽山:師匠(二所ノ関親方=元横綱・稀勢の里)以来の「日本人横綱」ということで期待が大きかったので、残念です。
横綱に昇進すると、さまざまな行事があるうえに、本場所では「横綱土俵入り」という大きな仕事があります。大関時代とはまったく違う責任もあります。ましてや、今場所は豊昇龍が4日目から休場して、いきなり「ひとり横綱」になってしまったのも気の毒でした。
そして、以前からあった「引くクセ」が大事な琴勝峰戦で出てしまった。その前の日(12日目)の一山本戦も引き技を出して、同体、取り直しでなんとか星を拾ったものの、本来負けていた相撲です。ただ、横綱のノルマである最低2ケタ(10勝)はクリアしたので、来場所に期待したいところです。
問題は、豊昇龍ですよ。
今年春場所、横綱に昇進して以来、皆勤したのが夏場所の1場所しかない。本人は「休みたくない」という気持ちが強い力士ですが、「勝てない横綱」が土俵に上がり続けることはできないのが大相撲。早くケガを治してもらって、来場所は両横綱の優勝争いを見たいですね。
高安と玉鷲の好調、後押しは快適な環境か
――一方、ベテランの小結・高安関(10勝)、玉鷲関(11勝、殊勲賞)の活躍もめざましかったですね!
音羽山:玉鷲は40歳で大の里から金星を奪ったのですから、大したものですよ! 入門こそ私より遅いのですが、年齢は1つ上。体の衰えもほとんど見られません。
まあ、高安も玉鷲も、相撲に関してはすでに出来上がっています。力もあるので、極端に言えば懸命に稽古なんかしなくてもいいんですよ。つまり、体調さえよければ、勝てる。
IGアリーナは全面的に空調が効いていて、支度部屋の中に風呂もトイレもある。以前の会場とは、環境がまるで違うんです。そういう快適な環境の中で相撲を取れたことが、ベテラン勢の好成績につながったのかもしれませんね(笑)。
期待大! 10勝の若隆景は大関にリーチ
――さて、8月3日の大阪・関西万博場所を皮切りに、31日まで夏巡業が続きます。今後、期待する力士はどなたになりますか?
音羽山:関脇・若隆景が今場所10勝を上げました。夏場所で12勝しているので、9月の秋場所は大関に「リーチ」となります(大関昇進基準は3場所で33勝以上)。11勝だと33勝で昇進は確実でしょうが、大関が琴櫻1人という状況ですから、たとえ10勝でも昇進があり得るかもしれません。足腰のよさ、相撲技術の高さに加えて、このところ安定感が増してきました。期待大ですね。
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