かつては「女人禁制の3K職場」も…注目される「女性漁師」の活躍 深刻さ増す“人手不足”と“高齢化”の救世主となるか
仕事の「多様性」が魅力
それ以外にも、昨年春、神奈川県から滋賀県に移住し、琵琶湖で「えり」と呼ばれる小型定置網の漁師としてアユやビワマス漁を行っているのが田村志帆さん。「漁に出ると、季節によって周りの景色が変わるのが好き。琵琶湖に浮かんでいるだけでも楽しく感じる」と漁師生活を楽しんでいる。
なぜ漁師を職業に選んだのか――。田村さんに聞くと「一言で言えば多様性。OLとして決まった仕事をこなすのではなく、自然を相手にその都度、自分で考えながら仕事に取り組んでいけるのではないかと思った」と答えていたのが印象に残る。
かつては「女性ご法度」と言われてきた漁師の世界。漁船の守り神「船霊(ふなだま)」は、女性が船に乗ると嫉妬し、「海が荒れる」「不漁になる」という言い伝えがある。だが、そうした迷信にとらわれてはいられないほど、漁業現場は厳しい状況下にある。
ジェンダー平等を目指す社会で、紹介した通り、漁師に憧れを持つ潜在的な志願者が、他にも数多くいるのかもしれない。女性が漁業の場で力を発揮し、輝きを放つ姿は近年、SNSを通じて広く伝えられている。
半数以上が「女性の採用」に前向き
その影響もあって、毎年夏と冬に漁師を募集するイベントである「漁業就業支援フェア」
に参加する漁業会社・組織のうち、今年は半数以上が女性の採用に前向きだという。このイベントを主催する一般社団法人全国漁業就業者確保育成センター(東京)の馬上敦子事務局長は、「これからも多くの女性が漁師として活躍できるよう、受け入れ側もできるだけ環境を整えてもらいたい」と話している。
半年以上の長い航海が必要な遠洋マグロ漁業などでは、女性専用の寝室やトイレなどの設置が難しいほか、男性ばかりの船内で女性が「ポツンと1人」というのは、現実的ではないかもしれない。ただ、漁師のおよそ8割は、近場で漁を行う沿岸漁業の従事者。男性漁師が定着せずに減る一方である現状を考えると、「女性大歓迎」を謳って職場に新たな息吹を注ぐことも必要なのかもしれない。
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