斎藤元彦知事を追及した女性記者が「クレーム電話」で配置転換 最後に“涙の直訴” 兵庫県発「報道弾圧」をテレビ朝日元法務部長が解説

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「時には炭酸飲料で“気分をスカッと爽快に!“」

 だが、この女性記者の質問内容のどこに問題があるというのか。そもそも元県民局長の遺族に対する「給与返還請求」をめぐる住民監査請求はこれまで290名超の住民による請求の全てが兵庫県監査委員によって棄却または却下されている。

 その上で提訴がなされるという展開に事態の長期化を避けようとした遺族の行動に対して「非を認めた」という攻撃が続くという尋常でない現状を受け、斎藤知事の見解を問うのはごく真っ当なものだ。担当から外されることになったという記者は、冒頭の発言後、斎藤知事にこう訴えかけた。

「いつも震源地にいるのは知事です。知事しかこの状況を変えられないと私は思っています。なのに知事はこの状況を問題に思ってるようにも、変えようと思ってるようにも見えません」

 だが斎藤知事は「(記者が)ご私見の方を述べたという風に思いますけども」「(会見の)質疑の方を、まあできるだけ自分としてできることをさせていただいてるというところです」という全くかみ合わない発言をしただけ。他の記者が「言論状況として異常だ」と指摘しても「個別の件についてのコメントはできないという状況ですね」とノーコメントを貫いた。

 そして記者が配置転換を明かしたその日の晩、斎藤知事がXに投稿したのは会見ではなく熱中症対策についてだったが、そこには唐突とも思える次の一文が記されていた。

「時には炭酸飲料で“気分をスカッと爽快に!“」

「異常な言論状況」については発信することはなかった。

会社は女性記者を守ったのか

 この一連の事態には2つの重い問題が含まれていると思う。一つは「記者個人への攻撃」による報道の委縮という問題だ。記者会見の様子がそのままネット中継される中、「会社」よりも攻撃に弱く、その分攻撃する側からすれば狙いやすい「記者個人」がターゲットになる例が増えている。

「生身の人間」である記者が不特定多数の脅威に晒されることを許せば取材・報道の委縮を招きかねない。こうした事態をいかに防ぐかは大きな課題だが、そこでもう一つの問題が浮かび上がる。

 それは「会社はこの記者をきちんと守ったのか」という点だ。

 女性記者が県政担当を外されたことを明かすと、立花孝志氏はYouTubeで記者をこう批判した。

「あなたがやってることがおかしいから、X社もあなたを担当替えしてるんですよね」(注:動画では会社名入り)

 この記者が勤務する報道機関は神戸新聞の取材に対し、配置換えの理由の説明は「差し控える」とコメントしたという。だが報道機関が記者への誹謗中傷に公式に抗議せず人事異動だけを行ったら、攻撃した側にとっては自らの「勝利」と映りかねない。まず報道機関が毅然と対応し、記者を守る姿勢を鮮明にする必要があるのではないか。

 女性記者はこうも述べていた。

「これをまた成功体験として、またネットの人たちがこぞって兵庫県に集まってくると。兵庫県はそういう遊び場になっていると、私は思います」

 この事態を「成功」になど決してしてはならない。強くそう思う。

西脇亨輔(にしわき・きょうすけ)
1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうま』『ワイドスクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。弁護士登録をし、社内問題解決などを担当。社外の刑事事件も担当し、詐欺罪、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反の事件で弁護した被告を無罪に導いている。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。

デイリー新潮編集部

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