パ・リーグは熾烈な優勝争い 日本ハム、“金満補強”ソフトバンクとの「大きな違い」が浮き彫りに…他球団の編成担当はどう見ている?

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因縁の戦いの行方は

 そして、冒頭でも触れた「スカウティングと育成で勝つ」という球団の方針が見事に機能している。

 過去10年にドラフト上位で指名した選手からは、加藤貴之、石井一成、清宮幸太郎、野村佑希、河野竜生、伊藤大海、五十幡亮汰、達孝太、金村尚真の9人が主力へと成長した。

 このほか、堀瑞輝も現在は苦しんでいるが、2021年には最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得しており、矢沢宏太や細野晴希も一軍で結果を残しつつある。

 また3位以下や育成ドラフトで指名された選手からも、玉井大翔、万波中正、田宮裕涼、水野達稀、北山亘基、柳川大晟らが大きく成長し、ドラフト5位ルーキーの山県秀も貴重な戦力となっている。

 かつてのダルビッシュ有(現・パドレス)や大谷翔平(現・ドジャース)のような球史に残る選手が出てきていなくても、これだけの多くの選手が成長しているのは、やはり「スカウティングと育成」が優れている証拠だ。

 さらに付け加えると、西村天裕(現・ロッテ)や吉田輝星(現・オリックス)といったドラフト上位で獲得した選手をトレード要員にできた。これもドラフトで獲得した選手の多くが、一軍の戦力となった“副産物”だと考えることもできる。

 これらの状況を踏まえてみると、「自前で選手を育てること」と「他球団から積極的に補強すること」の両輪が上手く回っている。これが、好調なチーム事情に繋がっていると言えそうだ。

 パ・リーグで日本ハムと首位争いを演じるソフトバンクは、ドラフトで育成選手を多く指名し、ファーム施設を充実させた一方で、主力選手は、FAやメジャー帰りの選手が多く、日本ハムと比べると、大枚をはたいた補強(他球団のファンからは金満補強と揶揄されている)に頼った印象が強い。

 また、近藤健介、有原航平、上沢直之と日本ハム出身の主力選手が多いのも“因縁”を感じる。それだけに、日本ハムがソフトバンクを上回ることができれば、パ・リーグは、“新たな時代”に突入したと言えるのではないか。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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