パ・リーグは熾烈な優勝争い 日本ハム、“金満補強”ソフトバンクとの「大きな違い」が浮き彫りに…他球団の編成担当はどう見ている?
積極的な補強が奏功
レギュラーシーズンも残り、約50試合となった今年のプロ野球。パ・リーグで順調に勝ち星を積み重ねているチームのひとつが、日本ハムだ。3月、4月は少し打線が奮わず貯金2で終えたものの、5月から7月は3カ月連続で6割を超える勝率を記録。チーム防御率、得点、本塁打数などでリーグトップの数字をマークしている。では、好調なチームの要因はどこにあるのだろうか。【西尾典文/野球ライター】
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日本ハムは「スカウティングと育成で勝つ」というスローガンを掲げて自前の選手を育ててチーム作りを進めてきた。それに加えて、積極的な補強が奏功している。
他球団の編成担当は、日本ハムについて、以下のように分析する。
「以前の日本ハムは、年俸総額の上限が厳しく決められており、実績のある選手は、他球団やメジャーに移籍するのが“既定路線”でした。しかし、今は本拠地が移転して収益面が改善したこともあって、他球団から実績のある選手を多く補強するようになりました。FAでも伏見寅威、山崎福也(いずれもオリックスから移籍)、福谷浩司(中日から移籍)と3年連続で選手を獲得していますが、今までになかったことです。外国人選手のレイエス、孫易磊、古林睿煬らも他球団との争奪戦だったと聞きます。近藤健介(ソフトバンクにFA移籍)は引き止められませんでしたが、加藤貴之の残留には成功しました。新庄監督が就任してから、特に補強に積極的になったように見えますし、それが今の成績に繋がっている部分は大きいと思いますね」
過去を振り返ってみると、伏見を獲得するまでに日本ハムがFAで補強した選手は、メジャー移籍を断念した稲葉篤紀(2004年オフ)と、ソフトバンクからの出戻りという形で獲得した鶴岡慎也(2017年オフ)しかいない。いかに、近年の日本ハムが、積極的な補強を進めていたのがよく分かる。
「トレード」「現役ドラフト」での成功例
他球団を見ても、実績のある選手を獲得しながら、期待したようにチーム成績が上向かないケースも少なくない。日本ハムでもうひとつ大きいのが、トレードと現役ドラフトによる加入選手の活躍だ。
投手では、斎藤友貴哉(阪神から移籍)、山本拓実(中日から移籍)、野手では郡司裕也(前同)、水谷瞬(ソフトバンクから現役ドラフトで移籍)、吉田賢吾(前同)らが大きな戦力となっている。
これに加えて、近藤健介のFA移籍にともなう人的補償で移籍した田中正義は、伸び悩んでいたソフトバンク時代が嘘のように、守護神の座を掴んだ。
「日本ハムは、以前から12球団の中でもトレードが多いことで知られており、他球団の選手に対する調査やスカウティングも熱心ですね。当然、他球団もトレードに備えて、主にファームの選手をチェックしていますけど、実際にトレードがなかなか成立しなければ、現場はそこまで力を入れなくなります。日本ハムが、現役ドラフトでたて続けに成功しているのは、熱心な現場の努力がよい影響を与えているように感じます。また、トレードは交換要員が必要になりますけど、選手を放出する思い切りの良さがありますね。これも、主力選手が多く抜けてきた経験が生きているのではないでしょうか」(前出の編成担当)
少し古い話になるが、日本ハムの球団関係者が、巨人で二軍暮らしが続いていた大田泰示について、「うちに来れば確実に戦力になる」との話を聞いたことがあり、実際、大田は日本ハムに移籍してから主力選手に成長した。もちろん、全てのトレードが成功しているわけではないが、他球団に比べると、ちゃんと一軍で戦力になる選手が多いことは確かだ。
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