夏の高校野球、“猛暑対策”に監督やコーチは…「クーリングタイムはいらない」と否定的な意見 “過密日程”の是正を求める声も

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 8月5日開幕する第107回全国高校野球選手権。その出場をかけた地方大会は7月29日で全日程が終了し、49の代表校が決定した。近年、夏の甲子園で話題となるのが、暑さ対策だ。35℃を超える猛暑日が増えており、現在の大会のありかたに対する疑問の声も多い。【西尾典文/野球ライター】

肯定的な意見が

 それを受けて、日本高野連は、様々な対策を講じている。一昨年からは5回終了時に10分間の“クーリングタイム”(※今年は8分間に変更)を実施し、昨年からは日中の気温が高い時間帯を避けて試合を行う“二部制”も試験的に導入した。

 大会初日の開会式は、昨年は8時半から行っていたが、今年は16時開始に変更される。なお、“二部制”は引き続き今年も継続する。

 先日まで行われていた地方大会でも、各都道府県の高野連がそれぞれ暑さ対策を実行していた。

 富山大会と三重大会は、夏の甲子園にならう形で“二部制”を導入。気温が高い時間帯を避けて、第1試合は9時、第2試合は15時開始という形をとった。

 このほか、第1試合の開始時間を8時台に早める県が増えた一方で、愛知大会は、5回戦以降の第1試合を14時開始、第2試合を16時半開始にする“サマータイム”を取り入れた。

 千葉や埼玉をはじめ多くの大会は、5回だけでなく、3回、7回にも“給水タイム”という名目で休憩時間を導入している。選手が負傷した場合には、全選手を一度ベンチに戻って休憩や給水を促し、攻撃時間が極端に長引いた時にも一度中断するシーンも見られた。

 猛暑の中で、何とか選手の健康面に配慮しながら、試合を実施する姿勢は、過去とは比べものにならないほど進んでいる印象だ。

 では、このような対策について、現場の指導者はどう感じているのだろうか。複数の指導者に話を聞いたところ、“二部制”については肯定的な意見が多かった。

 甲子園に出場経験を持つある学校のコーチは、暑さ対策以外のメリットについても、以下のように話してくれた。

「個人的には第1試合が最もやりやすいですね。気温もまだ高くないですし、前の試合の展開によって、開始時間がずれることもない。試合がいつ始まるか分からない状態で、待ち続けることは調整が難しい。富山や三重のような形であれば、時間もずれることはありません。暑さ対策だけでなく、そういう点でも、現場としてはやりやすいですね」

“過密日程”を見直すべき

 一方で、運営という点では“二部制”による弊害もあるという。前出のコーチは、以下のように続ける。

「開始時間が早くなれば、当然、大会の運営に関わる先生方は早く集まる必要がありますし、終了時間が遅くなれば、それだけ業務から解放される時間も遅くなります。補助要員として動員される生徒もそうですよね。十分な指導者や生徒が確保できれば良いですが、二部制によって、運営側の負担は増えています」

 各都道府県の高野連は、基本的に野球部の顧問である教員によって成り立っており、彼らの協力なくして、地方大会は成り立たない。近年は、教員や指導者を目指す大学生も減っており、運営側に負担がかからない手法を検討する必要がありそうだ。

 一方で、“クーリングタイム”については、否定的な意見が多かった。夏の甲子園で“クーリングタイム”を経験した監督はこう話す。

「甲子園のベンチ裏はかなり涼しく、攻撃の間はベンチで休めるので、正直10分間も中断されると休み過ぎだなと思いました。(今大会は)8分間に短縮されるそうですけど、それでも“クーリングタイム”が必要なのか、疑問ですね。県によっては、3回、7回にも“給水タイム”を設けていますが、その度に一度リセットされて、1回も含めると、試合の“立ち上がり”が4度(1回、4回、6回、8回)もあるように感じるので、正直、調整が難しいです。慣れの問題なのかもしれませんが、5回に数分間休むだけで十分ではないでしょうか」

 今年の地方大会を取材していても、“クーリングタイム”や“給水タイム”の直後に、選手が脚を攣って、試合が中断するケースが散見された。

 逆に、気温が低くて過ごしやすい日でも、判で押したように“クーリングタイム”や“給水タイム”を実施し、観客席から疑問視する声があがっていた。このあたりは現場の声を聞きながら、今一度、対策を見直す必要がありそうだ。

 そして、暑さ対策に加えて、“過密日程”を見直すべきとの指導者の声が根強い。近年では、休養日を設けるなどしているが、地方大会は大会終盤になると、厳しいスケジュールを組んでいる。

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