パ・リーグ新人王レース 楽天・宗山塁と西武・渡部聖弥が先行も…“高卒4年目の右腕”が追走!他球団のスカウトは「高校時代とは全く別人」

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無傷の7連勝

 ルーキー以外の野手では、ロッテの捕手、寺地隆成と外野手・山本大斗も有力候補だ。

 寺地は、明徳義塾から2023年のドラフト5位で入団すると、昨年は高卒ルーキーながらイースタン・リーグで2位となる打率.290をマーク。今年は開幕一軍入りし、3試合目のスタメン出場となった4月18日の楽天戦ではプロ初ホームランを含む2本塁打を放つ大活躍を見せた。

 4月下旬からは、不振の佐藤都志也に代わって正捕手に定着。ここまでいずれもチーム2位となる69安打、打率.267をマークしている。

 守備面には課題が残るとはいえ、高卒2年目で、これほどの打撃成績を残している捕手はなかなかいない。新人王に投票する権利がある記者(新聞、通信社、放送局に所属し、プロ野球取材歴5年以上のキャリアを持つ記者)の評価も高くなりそうだ。

 山本は、2020年の育成ドラフト3位での入団ながら、2年目には二軍で12本塁打を放ち、支配下に昇格した。昨年は持ち味の長打力を伸ばして19本塁打、66打点で、イースタン・リーグの二冠王に輝いている。

 今年は4月16日の日本ハム戦で一軍初ホームランを放つと、5月以降はホームランを量産。ここまでチームトップの10本塁打と、高卒5年目で大きな飛躍を遂げている。

 打率は.204と低く、確実性に課題が残す一方で、ボールを飛ばす能力は、12球団の若手の中で屈指だ。近い将来、ホームラン王争いに加わる可能性も高いだろう。

 一方、投手でトップを走り、宗山と渡部を追いかけるのが、高卒4年目の日本ハム・達孝太だ。天理高校から2021年のドラフト1位で入団し、2年目までは体作りがメインで、二軍でも目立った成績を残していなかった。

 だが、昨年10月のロッテ戦で一軍初勝利をマーク。今年は5月からローテーションの一角に定着し、ここまで8試合に登板して6勝0敗、防御率1.12と圧倒的な成績を残している。昨年のデビュー戦から続く「無傷の7連勝」(すべて先発での勝利)はプロ野球記録である。

最後まで激しい争いか

 達について、他球団の関西担当スカウトは、こう話してくれた。

「高校時代は体が細くて、プロに入っても戦力になるまで、かなり時間がかかると思っていました。同じ学年の小園健太(市和歌山→DeNA1位)と比べると、完成度はかなり低かったですね……。ただ、当時から妙に大人びたところがあるというか、将来を考えて取り組んでいる様子はうかがえました。日本ハムはそういう点を高く評価していたようですが、今の投球を見ると、高校時代とは別人のように見えますね」

 高校時代は88kgだった体重は、現在101kgまで増えた。ストレートの球速も常時150キロを超えている。今の状態を維持して、二桁勝利をマークすれば、一気に新人王の本命に浮上しそうだ。

 達以外の投手では、育成ドラフト出身の西武・菅井信也が、前半戦だけで5勝をマークしたほか、同じく西武で、高卒3年目の山田陽翔が、ブルペンを支えて、28試合に登板し、失点2(自責点1)、防御率0.31と抜群の安定感を誇る。彼らも、後半戦の活躍次第では、新人王候補に浮上しそうだ。

 ここで挙げた以外にも新人王の資格を持っていて、今年大きく成績を上げている選手は少なくない。現時点では、宗山、渡部、達が先頭集団を形成しているものの、最後まで激しい争いとなりそうだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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