ついに故障原因が判明も「山形新幹線」に不安の声…トラブルが発生しやすい「特有の事情」とは

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山形新幹線の重大トラブル

 1992年の開業から約33年、首都圏と山形県を結ぶ大動脈として機能してきた山形新幹線の信頼が揺らいでいる。6月17日、鳴り物入りで導入されていた新型車両、E8系に重大なトラブルが発生。乗り換えなしで山形県内へ直通できることがウリだった新幹線が、福島駅で乗り換えが生じるケースが多くなり、本来のメリットを発揮できなくなったのだ。【取材・文=宮原多可志】

「山形新幹線は奥羽本線の一部区間で、線路の幅を新幹線と同様に広げることで首都圏との直通運行を可能にしました。いわゆるフル規格の新幹線を建設したものではないため、時間短縮効果はそれほど大きくありませんでしたが、開業のインパクトが大きかったのは間違いありません。当初は山形駅までの開業でしたが、のちに新庄駅まで延伸されました。

 それまでに多数あった山形と羽田空港を結ぶ航空路線が激減したことからも、乗り換えをせずに首都圏に行けるという利便性の高さが支持されたのは間違いありません。山形県民はもちろん、観光客やビジネス目的の利用者の間でも、首都圏との往来には山形新幹線を使うスタイルが定着したといえます」(鉄道ライター)

 これからの帰省シーズン、山形新幹線は帰省客によって大混雑する。E8系のトラブルは原因究明に約1ヵ月を要した結果、補助電源装置の半導体素子の損傷が原因と特定された。原因がはっきりしたことで、対策を行ったうえで、8月1日からは通常のダイヤに戻して運行する見込みという。ただし、お盆の時期に運行されていた臨時便は、車両が不足していることから、66本が運休になると発表された。

早期に運行を再開していいのか

 早々とE8系の運行を再開することに対し、不安を感じる利用者も多い。秋田県出身のA氏がこう話す。

「山形新幹線は秋田県南地方の人たちにも結構利用者がいます。というのも、秋田新幹線よりも時間はかかるものの、数千円安く東京に行くことができるので、故郷と首都圏の往復に無くてはならないインフラなのです。それゆえ、早く復旧してほしいと思っていたのですが、本当に大丈夫なのかと不安が拭えなくて、今年のお盆の帰省は飛行機を使うことにしました」

 E8系に限らず、JR東日本の新幹線全体に対する不安の声がSNSでも上がっている。というのも、最近起こっている新幹線の大きなトラブルが、ことごとくJR東日本に集中しているためである。前出の鉄道ライターもこう話す。

「昨年の9月、東北新幹線の“はやぶさ”と“こまち”の連結部分が走行中に外れるという前代未聞のトラブルが発生し、鉄道ファンの間でも騒然となりました。解決したと思ったら、今年の3月にも同じトラブルが発生。事故になりかねないトラブルを二度も引き起こし、“JR東日本は大丈夫なのか”と衝撃を受けた人が多かったのです。

 そして、今回のE8系のトラブルです。わずか1年間の間に、新幹線の信頼を揺るがしかねない問題が立て続けに起こっている。そのうえ、例年JR東日本はお盆や年末年始、ゴールデンウィークなどの多客期に、運行上のトラブルなどで遅延をたびたび引き起こしています。そのたびに駅が大混乱に陥っており、新幹線を使いたくないという声が上がるのも無理はありません」

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