ついに故障原因が判明も「山形新幹線」に不安の声…トラブルが発生しやすい「特有の事情」とは
トラブルが発生しやすいJR東日本特有の事情
JR東日本の新幹線が遅延すると、同社が運行する他の路線にも問題が波及することがある。それは、東京~大宮駅間の線路を東北・山形・秋田・上越・北陸新幹線が共有している(一部の東北新幹線は北海道新幹線にも直通している)ため、各地に向かう新幹線や各地から首都圏に集まってくる新幹線とで、既に線路が逼迫しているためである。
そのうえ、JR東日本の新幹線は大宮駅から先も、線路が分かれている。JR東海が運行する東海道新幹線は分刻みで東京駅を発着しているものの、途中の駅から新幹線が枝分かれすることがない。新大阪駅から先は山陽新幹線と直通運転しているものの、分岐や連結なども必要としないシンプルな路線だ。さきの鉄道ライターが言う。
「JR東日本の下りの新幹線は、大宮駅でいきなり東北方面と新潟・北陸方面に線路が分岐します。東北方面では福島駅で山形新幹線の線路が分かれますし、盛岡駅では秋田新幹線の線路が分かれている。新潟・北陸方面に向かう新幹線も、途中の高崎駅で線路が分かれています。
異なる方面に向かう新幹線が同じ線路を共用したり、途中で列車の切り離しや連結があったりと、東海道新幹線とは異なる複雑な運用をしているのがJR東日本。しかも、福島駅や盛岡駅で行われる切り離しや連結に要する時間は、わずか数分という短さです」
秋田~盛岡駅間の秋田新幹線の運転に携わっていたJR東日本の社員に話を聞いたところ、「うちが遅れてしまうと、盛岡駅で待っている新幹線に迷惑がかかってしまう」という心理的なプレッシャーが大きいのだという。秋田県の区間はクマやカモシカが出没したり、雪による障害が発生したりしやすいため、運行の際は相当な気を使うのだそうだ。
「これほど複雑なダイヤで運行される新幹線を毎日捌いているのは神業と言ってよく、日本の鉄道のシステムがいかに優れているのかを物語っています。しかし、正確に運行されることが前提の無理なダイヤを組んでいる印象は否めません。今後、北海道新幹線や北陸新幹線が延伸すれば、ますます線路が逼迫するのではないかと心配です」(鉄道ライター)
みどりの窓口に行列が……
E8系の再開が8月1日から始まる背景には、お盆の多客期になんとか間に合わせたいという、現場の強い熱意があったためだろうと想像できる。しかし、解決を急いだのは本当に正しかったのだろうか。昨年と今年に発生した連結器が外れるトラブルも、いまだに根本的な原因は究明されていないという。
JR東日本は合理化やIT化を意図してか、みどりの窓口を次々に撤去しており、主要駅の窓口に行列ができる光景は風物詩となっている。そのうえ、鉄道のトラブルが重なってしまうと、払い戻しや乗車変更を求めて大蛇のような列ができる。JR東日本も券売機の機能の強化に乗り出したものの、いまだに窓口でなければできないことが多い。
鉄道のIT化は、何の滞りもなく運行されていれば可能かもしれないが、想定外のトラブルに見舞われると対応が困難になることは、これまでのトラブルで実証されている。多くの人が帰省する8月、新幹線が滞りなく運行されることを祈念したい。万が一、トラブルが起こってしまったら、今度こそ、新幹線への信頼を根底から揺るがしかねないだろう。






