リ・スタート「西村康稔」元経産相が語った「日本の成長戦略」 AI・ロボットを徹底活用し、所得増と行革を

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AIとロボットで徹底的行革

 ――税収が上がれば政府の歳出を賄う財源も増えることになる。

 これと合わせ、不断の改革とあらゆる成長戦略を総動員すれば、消費税率10%のままで社会保障費の伸びも賄うことができ、子育ての負担も下げることができる。人材にも積極的に投資できる。物事を成し遂げようとすると、資源の乏しい我が国では教育にどれだけお金を掛けられるかにつながる。これは当然、博士までを含めた理系人材の育成も力を入れなければならない。短期的にすぐやるべきことと、10~20年後を視野に入れなければならないことに分けて考える必要があるが、いずれにせよ、徹底した成長路線の政策、そのための規制改革特区の活用推進などをぜひ実行していきたい。

 ――日本は少子高齢化に伴う人手不足が深刻化しつつある。

 AI、ロボットを使うことで、行政も徹底的に改革できる。 イーロン・マスクがSNSのツイッター(現X)を買収したとき、ツイッターには7,800人の社員がいた。AIを積極活用したことで、それが今や3,000人だ。これを見れば分かるように、国も地方もAI導入を加速させれば、人手不足を乗り越え、生産性を上げ、行政コストをかなり下げることができる。国民負担を抑制する意味でも、こうした行政改革は重要だ。

 また、民間部門でも余剰と言われる人材を「リスキリング」でAI、ロボットを使いこなすようになれば、所得も上がるし、経済成長に大きく寄与する。AI、ロボティクスの導入は成長戦略の肝であり、ぜひ加速させたい。

レアアースや電池にも力

 ――経済成長戦略について具体的な産業ごとに知りたい。

 AIの事業化は、例えばソフトバンクや楽天が目指しているような大規模モデルだけでなく、スタートアップやベンチャーなどが特定の分野に特化して取り組む意義も大きい。それらを束ねていけば、社会全体においては大規模モデルに対抗できるからだ。例えば、ロボティクスのデータに的を絞ったモデルなど、さまざまなジャンルごとに開発されている。こうした動きを応援していきたい。

 それから、重要鉱物、レアアースをしっかり確保しながら、電池、バッテリーも力を入れている。 リチウムイオン電池は中国に席巻されてしまったことは事実。しかし、電解質に液体を使わず、安全性が高いといった利点がある「全固体電池」を含め、経済安全保障や脱炭素(GX)などさまざまな関連予算を活用し、日本がもう一度、世界をリードできるようになることを目指す。

 ――電力については、どのように考えるか。

 生成AIの活用が進むと、電力消費が増え、必要なエネルギーが増大する。 原子力の活用は重要であり、次世代の原子力について実用化を目指している。政府は6月に「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を改定した。核融合発電について、ようやくスケジュールを前倒しして、2030年代の発電実証を目指す方針を出した。現在は基礎研究の段階であり、内閣府や文部科学省が担当している。しかし、実用化が近づいてきていることを考えると、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が関与するなど、産業化の支援体制をつくることが大事だ。こういう夢のある技術を進めていきたい。

 ――ほかに重要な分野は。

 半導体産業については、2024年の経済対策で「AI・半導体産業基盤強化フレーム」ができた。法律により、2030年度までの7年間に10兆円以上の公的支援を行うこととなった。日本政府の支援の下で次世代半導体(2nm世代など)の国内製造を目指す企業「ラピダス」(東京)は、近く2nmの試作品を出してくる見通しだ。量産に向け、体制を整えていく段階となった。

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