高身長高収入イケメンなのに…「育ち」が残念すぎる “選民気取り”母の暴走エピソード集
母の奇天烈エピソード
母は料理以外の家事はあまりできなかった。子どもたちが率先して掃除や洗濯をした。母は「ごめんね」とも「ありがとう」とも言わなかった。自分に尽くすのが当然だと思っていたのかもしれないと彼は言う。
「よく学校にクッキーとか持たされてました。遠足のときも、みんなで食べなさいとシフォンケーキを大量に持たされる。先生も困ったでしょうね。中学のときの部活では、何かあると母がお重で大量の料理を作るんです。でも自分では運べないから、わざわざアルバイトを雇う。ちょっとおかしいですよね。母は『これが愛よ』と言っていたけど、おそらく承認欲求だと思う。母は寂しい人だったんだと僕は考えています」
人との距離のとり方も、なんとなく変だった。昨日まで仲よくしていたママ友と急に縁を切り、「あの家の子と遊んじゃダメ」と命令したり、ちょっと知り合った人を夕飯に招こうとして断られたり。自分は大事にされて当たり前の存在だと思って育ったのだろう。それでいて、母は無償の愛を子に注ぐことはしなかった。いや、できなかったのかもしれない。
「僕は母の気分次第でかわいがられたり、消えろと言われたり。高校生になるころには、母はそういう人だと自然とわかったので、あまり母の言葉に振り回されないようにしようと防衛本能が強化されました」
そんな母を父がどう思っていたのかはよくわからない。秀平さんにとって、父はいつも「仕事で家にいない人」だったから。年に1度は家族旅行をしたが、それも「家族はそうするのが当然」「幸せを人に見せつけるため」の恒例行事に過ぎなかったのだろうと彼は推測している。
告白してくる女性が「信じられなかった」
秀平さんは親の期待を裏切って公立高校に入学した。有名私立に軒並み落ちたからだ。だが高校2年生のときの担任と人間的な信頼関係ができて、自分が変わっていくのがわかったそうだ。
「いい先生でした。受験勉強なんかしなくてもいい、ものを知ること考えることが楽しいと思ってもらいたいというのが口癖だった。先生は戦後生まれだけど、親が昭和初期生まれだからと戦争体験も聞かせてくれました。僕はそれで近現代史に非常に興味を持った」
もっと知りたい。その思いから近現代史を学ぶため、大学へ行こうと決めた。だから「手段としての受験勉強をした」のだ。受験ありきではなかった。
大学入学と同時に、シャイだった自分を変えようと思った。サークルに入り、アルバイトをし、とにかく人と関わってアクティブに動いた。そうこうするうちに女性に告白されることが多くなっていると気づいた。
「告白されても、僕は忙しくてつきあえないけど、友だちとして仲よくしようよと答えていました。人間性を知りもせず告白してくる女性も信じられなかったし。友人が『おまえはいい男だから得だよな』と言うので驚いたんです。僕にはまったくその自覚がなかった。外見なんて人それぞれ好みがあるから、当時の言葉で『ハンサムだね』と言われても信じられなかったんです。別にそこに価値があるわけでもないし」
なぜか総スカン状態に…
身長が高く、顔立ちが整っている。それだけで人が寄ってくるのが気持ち悪かったと彼は言う。顔立ちなんて好みの問題、逆に自分には中身がないと思われているのがコンプレックスだった。実際、彼は自分の中身は空っぽだという認識をもっていたから。
「ただのモテ自慢だと思われるかもしれないけど、そうじゃないんです。告白してきた女性たちは、結局、僕が『冷たく断った』と言いふらす。男友だちからも、『もったいないことするなよ』とか『女性の気持ちを考えろよ』とか言われる。僕はどうしたらいいかわからなかっただけだし、恋愛するには時間が足りなかったし、そもそも恋なんてしたこともないだけなのに……」
なぜかそのうち、男女双方から総スカン状態になった。そのとき、「あなた、意外と不器用ね」と話しかけてくれたのが、クラスメイトの亜紀さんだった。漆黒のロングヘアがトレードマークで「神秘の美女」と呼ばれていた彼女だけが、彼の孤独を理解してくれたのだ。
「不器用というより、そもそも恋がわからないと言ったら、『私と同じタイプ』と彼女が笑ってくれた。大学にいるときはだいたい彼女と一緒にいました。だけど彼女は僕と違って奔放なところがあるから、キャンパスを出ると『私はこれから彼氏と会うから。じゃあね』といなくなってしまう」
神秘の美女と、学内切ってのイケメンとの恋が噂されたが、実情はそんなものだった。彼はアルバイト先では明るくふるまっていた。特に主婦ウケがよかったらしい。
「ファミレスでバイトしていたので、パートさんとは仲がよかったし、お客さんの主婦たちからも声をかけてもらいました。誰も『告白』なんてしなかった。だから居心地がよかったんだと思います」
だが恋に晩熟な秀平さんの人生は、就職と同時に突然、変わっていった。
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恵まれた環境と裏腹に、ここまでの秀平さんの前半生は、苦心の連続だったようだ。【記事後編】では“電撃結婚”を経て家庭の安らぎを知ってもなお、休まらない秀平さんの心の行方を紹介している。
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