「備蓄米はもうやりたくない…」 コメ騒動で「倉庫業者」が“大打撃”の真相 「ネズミがコメ袋に侵入」で億単位の損害が生じるケースも

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リスクの高い備蓄米

 さらにもう一つ、「備蓄米はもうやりたくない」という声が上がるのが、事故米に対する備蓄米と民間米との対処の違いだ。

 鼠害を及ぼすネズミは、配管や屋根裏など、人間の手が届かないような狭い場所などを通ってやって来るため、体がホコリまみれ。そんな状態でコメ袋に侵入すると、ネズミの通った跡が、黒や白の線状になって着く。

 一般的にスーパーなどに出回る「民間米」の事故米は、そのネズミの通った筋があれば当然その部分は取り除き、その周辺にあった米も、国が派遣した組織の検査や判定を経て、ランクを落として流通させる。

 しかし、備蓄米で鼠害などが出た場合、その周辺に積まれているコメがすべて事故米扱いになるのだ。すべてのコメを事故米とされるため、なかには億を超える賠償をさせられるケースもある。

 備蓄米は、それほどリスクが高いため、受託事業体制度ができて以降、「備蓄米はやりたくない」という倉庫が増えているのである。

「備蓄米をやれるところは意外に少ない。施設の設備をちゃんとしなくちゃいけないし、地理的にも向き不向きがある。昔から倉庫業をやっている老舗の倉庫会社さんが多い」(同)

 備蓄米を扱う現場は、コメそのものだけでなく、管理できる倉庫もが消えてなくなってしまうかもしれない危機に直面しているのである。

橋本愛喜(はしもと・あいき)
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許を取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働問題、災害対策、文化差異、ジェンダー、差別などに関する社会問題を中心に執筆中。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書)、『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』(KADOKAWA)

デイリー新潮編集部

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