「備蓄米はもうやりたくない…」 コメ騒動で「倉庫業者」が“大打撃”の真相 「ネズミがコメ袋に侵入」で億単位の損害が生じるケースも

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「受託事業体制度」とは

 倉庫会社からは、今回の「大量放出」以前からこんな声が聞かれていた。

「備蓄米はもうやりたくない」

 その大きな原因になっているのは「受託事業体制度」だ。

 受託事業体制度とは、いくつかの民間企業がグループ(受託事業体)を組み、共同で備蓄米を入札する仕組みで、こうした受発注の方法は、建設業など、他のブルーカラーのなかでもよく見られる。コメ業界の場合、入札時の代表になるのは大概、大手商社か米卸業者、大規模物流企業などで、その下に流通企業や倉庫会社が連なる。

 この受託事業体制度ができるまで、備蓄米の保管、運送、カビのチェック、変形加工、流通などの業務は、すべて国の管轄で、当該業務が発生するたびに、農林水産省が業者を選定・契約し、個別の業務をそれぞれ委託・管理していたのだ。

 しかし、カビが生えたりネズミが侵入したりして食べられなくなった事故米を食用として高く売り流通させた「事故米不正転売事件」(平成20年9月)などをきっかけに、これら一連の業務を、平成22年10月から包括的に民間事業体(受託事業体)に委託するようになった。

責任を押し付けられる倉庫会社

 そのころから「保管料」が大幅に下がり、利益が薄くなったことでやめていった倉庫会社も多い。しかし、何よりもやめたいと思う理由は、その構造にあるという。

「受託事業体制度は、一種の多重下請け構造になっているんです」(同)

 受託事業体制度には、先述した通り、実際に入札する会社(商社)をトップに、いくつかの事業体が集まっている。が、その末端にいるのが倉庫会社だ。

「カビが生えたり、水に浸かったり、ネズミの被害(鼠害)に遭ったりした、いわゆる『事故米』が生じた際、構造上、すべての責任を倉庫会社さんがもたされている現状があるんです」(同)

 コメ保管の現場では、この事故米の発生は免れない。なかでも野生の動物は、どんなに精巧な仕掛けを施しても庫内に侵入してくる。

 こうした事故米の対応に対し、国交省が定める標準倉庫約款には、「善管注意義務」が記されている。要は、「普段から気をつける義務」、「保管時、常にベストな状態が保てるように管理しなければならない義務」のことだ。

 しかし、裏を返すと、ネズミ捕りやネズミ返し、湿度調整装置の設置など、この善管注意義務をしっかり遂行していることが証明されれば、倉庫会社の補償に関しては免責になる、ということだ。

 ところが、備蓄米に関する農林水産省との契約には、「倉庫会社が補償しなければならない」とされているという。

「しかも、実際お金を払うのはほとんどすべてが倉庫会社。立場が非常に弱いんです。これが、業界で『倉庫会社が多重下請け構造の末端にいる』と言われる所以です」 (同)

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