「たかがAV女優のくせに」と叩かれて…紗倉まな、興味の“動線”を作るのに副業は「必須」

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「漫画村」のような違法サイトが…

 仕事自体については、向き不向きがあるんだなということを感じるようになりました。「向いてないな」と思っても世間からは評価されたり、自分としては「向いているな」と思っていても、世間からは評価されないことがあるとわかるようになってきました。そうした経験を経て、どうしたら自分をよく見せることができるか、自分が世間に求められていることは一体何なのか、を考えながら活動できていたように思えます。

 デビューしてから数年の間は、仕事に対しては「がむしゃらに、とにかくオファーがきた仕事は全てこなす!」という、体育会系と言いますか、ガッツや熱量でどうにかぶち抜いていく「パワー系の考え」で取り組んでいました。

 前までは向こうの意図を汲み取って、向こうが求めている通りに動く、という先方第一主義で仕事をしていましたが、今では自分が思うことや、業界に対して抱く違和感をきちんと言うようにしています。自分の身を置いている場所だからといって、業界を全擁護することも、うわべだけを掬い取ったようなきれいごとだけを言うような姿勢をとることもやめるようにしました。このあたりは大きな変化だと思います。

 今、AV業界は斜陽産業と言われており、正直いつ潰れるかもわかりません。「漫画村」(違法な海賊版サイト)のような違法サイトがあって、作品がリリースされた翌日には、違法なアップロードがされてしまい無料で全編を見られるような状態になっているんです。海外のサーバーなので取り締まることもできない。売り上げ的には当然、大ダメージだと思います。

 正式なアダルトのプラットフォームでも、DVDが50円セールや100円セールのような叩き売りになっているのを見ると、AV業界の全盛期はとっくに終わってしまったのだな、とも実感します。ギャラについては、私はデビュー当初から比べると3倍になったのですが、なるべく業界に貢献できるように自分ができることは最大限やっていきたいな、と常に思っています。

 AV女優なのに他の仕事をしていると、「本業を頑張ってない」「お前はタレント気取りか」「たかがAV女優のくせに」などと叩かれることもあります。私としては、肩書きを「AV女優」と書いてもらいたいと常に言っているのですが、当然メディアに出演する際には先方の判断で「セクシー女優」と表記されてしまうことも多く、なぜか私がその表記によって他者から叩かれる、という謎の現象も起きていたり……。こうした葛藤はメディア露出をするにあたってついて回るものですが、かといって気持ちが折れることはありません。

 昔はAVだけ売れていれば生き残ることができたかもしれませんが、今はパラレルキャリアの時代だと感じています。副業をやっていることが「必須」と言えるくらいで、執筆やタレント業をしていると「AVに専念しろよ!」とよく言ってくる人がいるのですが、それは木を見て森を見ずの状態だな、と冷ややかな目線で見てしまいます。AV以外で他者に知っていただけるきっかけを自分で作り出さないと、巡り巡って最終的にはAVの売り上げにつながらないので、AV女優を続けたいのならば別の仕事もしなければいけない、そういう時代です。だから私も、時代とともにできることは手当たり次第に全部やっていこうという気持ちでいます。

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 第3回【「イッヌ様」と暮らし始め生活が激変 紗倉まな、愛犬がまろやかに閉ざしてくれた「家族コンプレックス」】では、愛犬「イッヌ様」との生活について語っている。

紗倉まな
1993年、千葉県出身。2012年、AVデビュー。著書に『最低。』(後に瀬々敬久監督により映画化、東京国際映画際のコンペティション部門にノミネート)、『春、死なん』(2020年度野間文芸新人賞候補作)、『うつせみ』、他にもエッセイ多数。近著に新エッセイ集『犬と厄年』。

デイリー新潮編集部

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