「イッヌ様」と暮らし始め生活が激変 紗倉まな、愛犬がまろやかに閉ざしてくれた「家族コンプレックス」

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子供のような存在

 以前から抱いていた家族コンプレックスについては、こうしたイッヌ様との暮らしで、だいぶまろやかに閉ざされた感じです。

 近著『犬と厄年』では、イッヌ様のこと以外にも、大人の友達や、長年一緒に仕事をしてきた女性マネージャーさんについても、結果、深く突っ込む形で書きました。女性マネージャーさんはデビュー当時から二人三脚でやってきた方で、私にとって唯一、「大人の女性」の見本とさせてもらっている方でした。

 その彼女が最近、出産し母親になって、いろいろと「考えたくなかったけれど考えたほうがいいのかな」と思考を巡らす機会は増えました。出産したのはあくまでも女性マネージャーさんなのですが、わがことのように転機としてとらえています。うれしさと切なさと、複雑な気持ちが溢れるようにして芽生えましたね。母となった彼女は輝いていて、もちろん心から応援していますし、常に彼女たちの健康と幸せを強く願っています。

 ほかの友人も出産など次のフェーズに突入していますが、出産については、現段階では私はその選択をしないだろうなと思います。イッヌ様は私にとっては子供のような存在で、一緒に生活していることで子育ての疑似体験のように感じることもありますが、こんなにも自分の感情や日々の出来事や仕事に振り回されて、一人で一人を回すことですら精一杯なのに、長ければ80年から100年ほど生きる生物を産んでしまった場合、私はその子のためにどれほどのことができるのだろうか、その子のためにどういったことをしてあげられるんだろうか、と自分のキャパをどうしても考えてしまうんです。

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 第4回【「たかがAV女優のくせに」と叩かれて…紗倉まな、興味の“動線”を作るのに副業は「必須」】では、AV業界の現状などを語っている。

紗倉まな
1993年、千葉県出身。2012年、AVデビュー。著書に『最低。』(後に瀬々敬久監督により映画化、東京国際映画際のコンペティション部門にノミネート)、『春、死なん』(2020年度野間文芸新人賞候補作)、『うつせみ』、他にもエッセイ多数。近著に新エッセイ集『犬と厄年』。

デイリー新潮編集部

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