「イッヌ様」と暮らし始め生活が激変 紗倉まな、愛犬がまろやかに閉ざしてくれた「家族コンプレックス」
「早く家に帰らなきゃ」
イッヌ様と暮らし始めてから、約2年半が経ちました。三十路になるタイミングで犬を家に迎えようと思ったのは、ある出来事がきっかけとしてありました。
小学生の頃、家に「ポコ」というかわいいポメラニアンがいたんですが、家庭の事情で離ればなれになってしまったんです。その後、別の家庭で「マミちゃん」という名前で暮らしていました。
三年前のある日、「マミちゃんが亡くなった」という知らせが母伝てに届いた時、私の気持ちの揺らぎが強くなったんです。以前から散歩中の通り過ぎる犬を見るたびに「ポコ」のことを思い出しては「私には、犬との生活は無縁なんだろうな」と罪悪感や寂しさを抱いていたのですが、「ついにポコが亡くなった」と知ってものすごく泣いてしまい、「最後くらいは会いたかったな、大好きだったな」としばらくの間落ち込んでいました。
その時、ふとネットで譲渡会の知らせのページにたどり着きました。当時、ポコと別れたときはまだ私は子供で、親の都合によるものだからという理由があっても、「自分は一生、犬と一緒の生活を送る資格がない」という制限をかけることで、ポコへ懺悔している気持ちになっていたんです。
譲渡会の知らせを受けた時、自分の今の「一人で自立して生きている」現状を踏まえた上で、未成年の時のような、無力感を味わっていたあの頃からは随分と時が経ったのだなという実感も芽生えました。応募だけでもしてみようかな、と譲渡団体にメッセージを送って、そこから始まりました。本当は、ずっと犬と一緒に過ごしたかったんです。
イッヌ様を家に迎えてから、私の生活は大きく変わりました。朝も早く起きて一時間半から二時間近くかけて散歩に行きますし、仕事のスケジュールも、長い時間留守番させないようにと工夫をして組んだり、それでも長く家をあけてしまいそうな日は、母に仕送りとトレードという形で事前に予約をして家に来てもらうようにしたり。毎日一緒に寝て、起きて、過ごす。「共生」がこれほどまでに幸せなことなのだと改めて思い知りました。
イッヌ様がいることで、「早く家に帰らなきゃ」とか、「寄り道しないで帰ろう」という気持ちになりますし、買い物も極力ネットで済ませるようになりました。出かけるなら一緒に連れて行きたいので、アウトレットなど犬同伴OKな場所を選んで買い物に行くなど、自分の行動も当たり前に変わりましたね。
[2/3ページ]

