「FF外から失礼します」って意味あるの? バカ丁寧な「ITマナー」「SNSしぐさ」への違和感を「ネットニュース編集者」が敢えて問う

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日本人らしいネットルール

 多くの日本人は、周囲の目を気にし、他人を不快に思わせないこと、他人に迷惑をかけないこと、相手を尊重することを行動原理の基本としている。他人がいる場所では「自分ファースト」ではなく「他人ファースト」的な行動をとりがちである。個人の幸せこそ重要、と考える傾向が強い外国人からすると、厚切りジェイソン的に「Why Japanese people!」と言いたくなるだろう。

 しかも「不快に思わせる」「迷惑をかける」ではなく、あくまでも「不快に思うかもしれない」「迷惑かもしれない」ということを先回りし、勝手に思いやることで、次のような行動を取るのだ。相手は何も気にしていないかもしれないのに。

 エスカレーターの右側を空け、エレベーターに乗れば率先してボタンを押す係になる。名刺を受け取るための順番を譲り合い、5人で飲んでいて先に生ビールが4つ届いたらとにかく自分以外の人に渡す。自分のビールが来るまでの間がいたたまれなくなって「どうぞ乾杯してください」と言い、自分は「エア乾杯」的動作をする、だが他の人も泡が薄くなるのを前に口をつけない――このように様々な「日本人らしい行動」が存在するが、こうした行動は、ネット上でも見受けられる。

 一番分かりやすいのがメールだ。「(相手の苗字)様」に始まり「いつもお世話になっております」から開始し、用件に至るまでの前置きが長い。アメリカ人などいきなり「あなたにギャラ減額してもらう件で今回はメールを書いている」などと結論をバシッと書く。締めの言葉は「〇月〇日までに返事をするように」と来る。だが、日本人は「暑さの厳しいおり、くれぐれも体調を崩さぬようご自愛ください」などと相手を配慮する言葉で締める。

完全無欠の人間

 百歩譲って、実際に知っている人・仕事上の付き合いがある人相手にこの丁寧な対応は理解できる。が、多くの日本人は、ネット上の見知らぬ他人に対しても、なかなかの配慮をする。ネットが一般化して30年近く経つが、初期の頃のものも含め、日本人らしい振る舞いをここで振り返ってみたい。

【mixi踏み逃げ禁止】
 SNSのmixiでは、自身の投稿を見に来て「足あと」がついたにもかかわらず、コメントをつけないことを「踏み逃げ」「読み逃げ」と呼び、それを禁止するユーザーがいた。要するに「私のところを訪れたのだから何らかの感想を書くのがマナーでしょ?」と言いたいのだ。だから、「踏み逃げ禁止」を掲げるユーザーには「とても楽しそうですね(*^ω^*)」などとどうでもいいコメントを書くのがマナーとされた。

【半年ROMれ】
 2ちゃんねる(現5ちゃんねる)用語。常連が集うスレッドに新参者がその場の空気感を読まぬ発言をした時に発せられる言葉。「今北産業」や「バカのすくつ(なぜか変換できない)」といった独特の用語に「それはどういう意味ですか?」や「『すくつ』ではなく『そうくつ』です。ほら、巣窟と出るでしょ?」などと書くと「半年ROMれ」攻撃が喰らわされる。これは「半年間Read Only Memberになって、その間は一切書き込みはせず、2ちゃんねるの作法を勉強しろ」という意味だ。これ、ラーメン二郎初心者を常連がバカにする空気感とも似ている。

【GREEの「他己紹介」】
 今では考えられないだろうが、ソーシャルゲームプラットフォームのGREEはかつて意識の高い若手ビジネスマン向けの交流を目的としたSNSだった。自己紹介ならぬ他己紹介というか、繋がっている人のことを解説する機能があり、これが美辞麗句に溢れた歯の浮くようなものだった。たとえばこんな感じだ。

「山田さんは僕の人生の節目節目で適切なアドバイスをくださった“アニキ”です。就職、部署異動、転職など都度相談に行き、常に僕の背中を押してくれました。頼れるアニキ! これからもよろしくお願いします!」

 完全無欠の人間がズラリと並ぶ姿は圧巻だった。

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