トランプ政権「不法移民対策」への支持が下がる切実な事情 政策めぐる不評を巻き返せなければ「選挙制度」にも“強権”か

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支持率は遜色ない水準だが

 トランプ米大統領は7月20日、就任6ヵ月を迎え、「今日の米国は世界中で最も人気があり、最も尊敬される国になった」と自賛した。

 たしかに国内の支持率は悪くない。

 米リアル・クリア・ポリティクスが集計した世論調査の平均値を見てみると、16日時点の支持率は45.5%で、1期目の同時期よりも約6ポイント高い。過去の大統領の2期目の同時期と比較しても遜色のない水準だ。2005年のブッシュ氏の支持率は45.5%、2013年のオバマ氏は45.8%だった。

 株価が最悪期からV字回復するなど、底堅い米国経済がトランプ氏の強気な政権運営を支えている形だが、同氏が公約に掲げる「米国の黄金時代」への道筋がいまだ見通せないのが現状だ。

 気がかりなのは、トランプ氏が実施しようとしている政策に対する国民の不満だ。

移民に対する国民の意識が変化

 看板政策である3兆4000億ドル(約505兆円)規模の税制・歳出法は苦労の末に成立したが、トランプ政権はこれを国民にアピールすることができていない。

 CNNが実施した最新の世論調査によれば、回答者の61%がこの法律に反対し、賛成は39%にとどまった。経済成長に寄与するとの主張に対しては、「効果がある」は29%、「有害」は51%、「大差ない」は20%だった。

 主な要因は、メディケイド(低所得層向け医療保険)や低所得層向けの食糧支援プログラムの大幅削減が国民の不評を買ったことだ。この法律により国境警備が強化されるというトランプ政権の主張も空回りしている感がある。

 政権発足当初、人気が高かった不法移民対策についても国民の支持が低下している。

 CBSが実施した世論調査では、トランプ氏の移民政策を支持するとの回答は49%と、6月の54%、2月の59%から減少した。

 国民の移民に対する認識が変化していることが影響している。

移民政策が労働力不足の原因に

 米国の世論調査・コンサル企業ギャラップが11日に発表した調査結果では、79%が移民は今の米国にとって「良いこと」と回答した。2001年の集計開始以来、過去最高となったが、昨年は64%で10年ぶりの低水準だった。

 直近1年間で移民に対する認識が大きく変わった背景には、足元の経済状況がある。物流施設運営の大手プロロジスのモガダムCEOは16日、米国の移民政策が労働力不足を引き起こし、建設コストを大幅に押し上げるとの見通しを示した。

 米国の住宅価格はこのところ上昇傾向にあり、多くの国民にとって高嶺の花になりつつある。移民不足によって価格がさらに上がれば目も当てられない。

 財政赤字が膨らむ中、政府の借り入れコストを減らしたいトランプ氏は金利の引き下げ
に躍起になっている。

 連邦準備理事会(FRB)に対して、金利を1%にまで引き下げろと再三要求し、パウエルFRB議長の解任にまで言及している。16日には解任するつもりはないとしつつも、不正行為があれば別との認識を示した。

 そしてFRBは今、スキャンダルに揺れている。FRBの本部改修費用が多額だとして、トランプ政権から批判の声が上がっており、これに対し、パウエル氏がFRBの監察官に正当性を証明するための調査を依頼するという異例の展開となっている。

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