「お前、いじめられっ子やったやろ」発言で批判集中 「千原せいじ」が理解できない「クルド人問題」

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「治安は悪くない」という決めつけ

 到着直後、ウイークリー・マンションのスタッフの人に、クルド人について聞くと、あまりピンと来ないという答えが返ってきた。駅前を歩くと、ギャンブルで負けたらしきおじさんがクダを巻いていたり、ガールズバーの女性が呼び込みをしていたりと、良くも悪くも活気はあるが、すごく治安が悪いという印象はなかった。拍子抜けだった。

 こういう「散歩」ベースにレポートをすれば、治安は悪くなっていない、という結論になるのは想像に難くない。筆者自身、当初、そのような感想を編集者に送ったくらいだ。

 しかし、これをもって「治安は悪くない」と決めつけ、地元の議員を非難するのはあまりに軽率な行為だ。

 そもそも千原さんは、理解していないようだが、川口市はとても広い。以下、『おどろきの「クルド人問題」』から、基礎知識を引用する。

「川口市は埼玉県の南部。都心から京浜東北線で北上し、北区の赤羽を過ぎ、荒川を渡った対岸にある。つまり、東京のお隣だ。東北・上越・北陸新幹線が停車する埼玉県最大の街である大宮や、県庁所在地の浦和よりも都心に近い。(略)面積は61.95平方キロメートルあるそうだ。

 東京に当てはめると、千代田区と港区と新宿区を合わせたよりも広い。都心部をぐるりと走る山手線内の面積が約64平方キロメートル。それと、川口はほぼ同じ広さ。ちなみにニューヨークのマンハッタンは58.8平方キロメートル。あの摩天楼の大都会よりも、川口市のほうが大きい」

 つまり千原さんは、千代田区の皇居周辺を歩き回って、新宿の歌舞伎町に顔も出さずに「東京の治安はとても良い」と言っているのとあまり変わらないのだ。

本当はこの問題に興味がないのではないか

 もちろん何を語ろうが自由なのだが、曲がりなりにも地元でこの問題に携わっている議員を嘲笑する資格はないのではないだろうか。

 この数年だけで見ても、川口市内でクルド人が起こしたとされる事件は少なくない。「医療センターでの100人規模の大暴動」「ひき逃げ事故を起こし69歳男性が死亡」「10代の女子に対する性的な暴行事件」等々。

 これらはマクロなデータ、「発生率」といったパーセンテージだけで片づけていい問題ではないだろう。

 筆者は駅前を拠点にしながら、多くの住民、議員、市長らに話を聞いた。「問題なんてない」といった呑気な反応を示す人のほうが少ないと感じた。治安など政策に関することについて、「体感」や「感情」だけで論じることは問題だろうが、それらを一切汲み取らないことはそれ以上に問題だ。

 おそらく千原さんは、本当はこの問題に興味がないのではないか。だったらなおのこと、地元の人にとって切実な問題に、軽いノリで口を出さないほうが良かったのではないか、と思うのだ。

石神賢介(いしがみけんすけ)
ライター。1962年生まれ。大学卒業後、雑誌・書籍の編集者を経てライターに。人物ルポルタージュからスポーツ、音楽、文学まで幅広いジャンルを手がける。著書に『57歳で婚活したらすごかった』『おどろきの「クルド人問題」』(近刊)など。

デイリー新潮編集部

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