G阿部監督の“懲罰交代”は「最もやってはいけないこと」 リーグ後半戦で一番心配なのは「監督の心理」だ【柴田勲のコラム】

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「ホメてほしい」と言った藤田監督

 藤田(元司)さんが監督の時、私は守備・走塁コーチを務めた。その際、藤田さんはわれわれコーチにこう言った。

「選手が失敗しても怒ってはいけない。良いところを見つけてホメてほしい」

 阿部監督が感情に任せて怒って懲罰を与えてもなんにもならず、残るのは他の選手たちへの「負の連鎖」だけだ。巨人は阪神3連戦で連敗したが、神宮での一件が暗い影を落とし、チームを重苦しい雰囲気にしていたと思う。

 開幕から出場し続けているのは吉川くらいなものだ。泉口は開幕時、ファームだった。

 それが岡本和真のケガ、坂本勇人の不調もあって起用されて、いまでは巨人を支える選手の一人だ。伸び盛りだ。「今日は戦力にならないと思って代えました」はない。

 泉口は交代直後、泣いていた。分かる。でも気を取り直して、よくやっている。頑張っている。藤田さんの言う通り、いちOBとしてここは泉口をホメたい。

一番の心配は阿部監督の心理

 現在、巨人は若手選手たちを使いながら戦っている。開幕時とはメンバーがガラリと変わった。大事なのはどうやって育てていくかだが、いかんせん経験が浅い。感情的な采配はやめた方がいい。イジメにしか見えない。怒るのではなく教えてやることだ。

 5~6の能力の選手を6~7に上げようと思ったら、時には拙いプレーにも黙って目をつぶり、ノビノビとやらせることだ。そのための環境をつくってほしい。

 19日には自力優勝の消滅、球宴前の借金ターンが決まった。おまけに阪神戦のシーズン負け越しも。前半戦での負け越し決定は球団史上初だという。

 残り54試合、球宴後は「四つどもえ」を制して、阪神への挑戦権を得なければならない。

 前半戦の最後の試合をこれ以上ない形で勝つことができたものの、一番の心配は阿部監督の心理だ。

「ホメて伸ばす」これが選手育成の一番大事なことだと思う。

(成績などは22日現在)

柴田 勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会理事を務める。

デイリー新潮編集部

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