G阿部監督の“懲罰交代”は「最もやってはいけないこと」 リーグ後半戦で一番心配なのは「監督の心理」だ【柴田勲のコラム】
阪神との3戦目はよく勝った
巨人が前半戦を42勝44敗3分、借金2の3位で折り返した。首位の阪神とは10ゲーム差だ。前回のこのコラムの時点と比べてまた開いてしまった。
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2位には0.5ゲーム差でDeNA、4位は中日、5位は広島。球宴後は巨人を含むこの4球団で阪神への挑戦権を懸けた戦いになる。
それにしても21日、東京ドームでの阪神3連戦の3戦目、よく勝った。5点差をひっくり返した。こんなのは久々だ。2連敗して3回終了時点で3点リードされた時にはこりゃダメだと思った。おまけに5回には大山悠輔の2ランで5点差となった。
それが7回、阿部慎之助監督の「一発が宝クジくらいの確率であるから」という砂川リチャードの同点3ランが飛び出した。2カ月ぶりの3号、フォークのすっぽ抜けか、チェンジアップが真ん中低めにきた。半速球だ。少し泳いだがうまく捉えた。
野球は一つのプレーで流れが変わる
この試合は勝ったというよりも阪神の自滅でもらったようなものだ。
リチャードの一発が出る前、1点を奪ってなお無死一、三塁で泉口友汰の一ゴロを大山が本塁へ悪送球して2点目が入った。
9回、吉川尚輝のサヨナラ安打も伊原陵人の2四球が絡んでの2死満塁からだった。吉川の前の打者、佐々木俊輔が11球粘って四球を選んだ。必死の打席だった。
野球は一つのプレーで流れが変わる。よく言われることだが、7回表、泉口が2死から大山の三遊間への強烈なゴロに反応よく飛びついて捕球すると、素早く一塁に送球してアウトにした。これは大きなプレーだった。
その泉口だが17日の神宮でのヤクルト戦で阿部監督から「懲罰交代」を食らった。同点の3回、無死一、二塁でスリーバントを失敗し、直後に門脇誠に代えられた。
バントを失敗したら代えるなら、最初から打たせればいい
阿部監督の気持ちは分かるが、これは監督として最もやってはいけないことだ。懲罰を与えるなら1・幹部批判、2・ボーンヘッドや怠慢プレー、3・全力疾走をしない、4・サインの見落とし。この四つだと思う。
選手が失敗したからといって罰を与えるのは絶対にダメだ。その選手もそうだが次に続く選手が委縮する。同じような場面が来たら、よし、うまくやってやろうと思って打席に立てない。プレッシャーだけがかかる。
無死、あるいは1死一塁でのバント成功率は、8割くらいはあると思う。これが一、二塁となると成功率はグッと下がる。一塁手が前にダッシュして封殺の可能性が出る。難易度が高くリスクが伴う。
こんな状況で失敗したら代えるというのなら、最初から打たせればいい。
ましてや泉口は巨人の打者たちの中で最も打っている選手だ。で、代わりに出てきたのが2割ちょっとの門脇誠だ。まだ回は浅い。感情的になっていたのではないか。
泉口は前の打席、チャンスで3球三振していたが、これはもう対戦投手との力関係で仕方ない。代えた理由の一つにはならない。
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