午前中はほぼ液体、動けずに溶けては母親にまとわりつく… 自閉スペクトラム症児を“超自然体”で演じた「11歳子役」が光るリアルすぎるホームドラマ
「ドラマウォッチャーと名乗る評論家もどきの連中のバカな感想」が頭にきている脚本家と、その妻で芸能事務所社長が主人公のホームドラマ「こんばんは、朝山家です。」が想像以上にファンキーで面白かったので、バカな感想を書こう。
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承認欲求強め、プライドはチョモランマ級だが、ビビリでエゴサーチが大好きな脚本家の夫・朝山賢太を小澤征悦が威厳ゼロで軽やかに演じる。妻としたい性欲も、色気を封印してコミカルに表現。そして、彼の才能を信じている妻・朝子を演じるのは中村アン。叱咤(しった)と罵声9割・正論と激励1割で支える剛腕妻っぷりがすごくいい。美しい造作を嫌味なくほぼすっぴんで打ち消し、罵声と舌打ちで彩る。キャスティングの成功は、夫妻だけではない。
反抗期と思春期のコンボ、デフォルト不機嫌な娘・蝶子を演じる渡邉心結(みゆ)も、女子高生の鬱屈(うっくつ)を実に自然体で演じている。親の揚げ足を取るほど理論的で、家族に対しては常にイライラ。それでも外面はよしこさん。心に闇、家族に不満を抱えていても、外ではうまく立ち回る女子高生だ。家族への嫌悪と怒りって、本来はこれくらい凶暴なんだよね。
日本のドラマで描かれる娘たちは、おっさんがメインで作るせいか、自分の淡い願望を乗せがち。従順で父親思いに仕上げがち(日曜劇場とかそうじゃね?)。
朝山さんちの蝶子はそんな娘じゃない。言葉も態度も尖りに尖っているのは、母親譲りでもあり。ただし、イライラは弟のせいもある。
小学生の弟・晴太(はるた)は自閉スペクトラム症。朝に極端に弱く、学校に行けないこともある。晴太の「特性」に理解を求める両親だが、蝶子から見れば「怠惰」としか思えず。ここに家族のリアルがある。晴太を演じるのは嶋田鉄太(超自然体な子役)。午前中はほぼ液体、動けずに溶けては母にまとわりつく姿を体現。自閉スペクトラム症でなくても、朝にぐずる子供ってこんな感じで液体化するんだろうなと思わせた。余談だが、同じマンションに住む男子がまさにこんな感じ。毎朝母親とけんかしながら登校する声が聞こえる。ああ言えばこう言う息子に、お母さんも時々理不尽なことを言ったりしてね。耳を澄ましてほほ笑ましく拝聴してます。
ということで、家族の実態がうそくさくない。朝山家の丁々発止の会話には、遠慮も配慮も功名心もなくて、好感が持てるのだ。もうそれだけでホームドラマとして大成功だし、朝山家のごちゃごちゃした家の中にもリアリティーが。動線を確保するために壁にいろいろとかけまくるよね、本棚の上部隙間に本を横差しするよね、と無駄に共感しちゃう。
賢太が国民的ドラマ、略して国ドラ(要は朝ドラね)の脚本を書き終え、無事に放送を迎えたところから物語は始まる。国ドラで注目されているうちに、賢太の監督映画の企画を出したい朝子は、猛烈に営業を開始。渋る映画会社、意気地のない夫、キレる娘にぐずる息子と、問題は山積み。はたして賢太は監督デビューできるのかというお話。ほぼ実話というので納得がいく。







