長嶋茂雄、野村克也らが本塁突入! ホームスチールをめぐる“珍事件” 巨人で“内紛”が起きたケースもあった!

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 6月28日の中日対広島で、1点を追う中日が9回2死一、三塁のチャンスに意表をつくホームスチールを試みるも、三塁走者・尾田剛樹が本塁タッチアウトでゲームセット。ネット上でも「まさか過ぎたわ」「本盗にあった怖い話」などの声が出た。成功しても、失敗してもインパクトが大きいホームスチールは、過去にもさまざまなエピソードを残している。【久保田龍雄/ライター】

あれはどう考えても納得できない

 長嶋茂雄のホームスチールに広岡達朗が激怒する事件が起きたのが、1964年8月6日の国鉄対巨人である。

 0対2とリードされた巨人は7回、先頭の4番・長嶋が二塁打を放ち、次打者・柳田利夫の投ゴロの間に進塁、1死三塁とした。

 次打者・広岡は、ベンチからスクイズのサインが出ていないのを確認すると、「ヒットが打てないまでも、外野フライ、あるいは緩いゴロならホームインできる」と気持ちを集中させた。

 ところが、カウント0-2からの3球目、長嶋が突然、ホームスチールを試みる。

 捕手・平岩嗣朗のタッチを避けるように必死にスライディングし、微妙なタイミングながら、富沢宏哉球審の判定は「アウト!」。

 セーフを確信していた長嶋は、「完全にノータッチ。平岩が及び腰でミットをベースの三塁寄りの角へ出してきたので、僕は一塁寄りの角を滑ったんだ。審判はちっとも動かず、捕手の後ろから覗き込んでいるだもの」と激高し、富沢球審を突き飛ばしたが、退場にはならなかった。

 牧野茂三塁コーチも「あれだけ突き飛ばしているんだから、(判定に)自信があったら退場ものだよ。それができないのは、自信がない証拠」と指摘したが、判定は覆らず、2死無走者となった。

 一方、打席の広岡は「どう見ても危険度の高い本盗など、やる場面ではない。走らすんだったら、代打でも出せばいいじゃないか」と不満をあらわにした。

 しかも、自分の打席で長嶋が本盗を失敗するのは2度目とあって、直後、三振に倒れてベンチに戻ると、川上哲治監督の前で「そんなに僕のバッティングが信用できないんですか」と怒りを爆発させ、試合中に帰ってしまった。

 その後、親しい藤田元司兼任コーチから「理由はともかく、あのままだとまずい。とにかく監督に謝ったほうがいい」と忠告されたが、「マナーの悪かったことはお詫びします。そのために罰を受けてもいい。しかし、あれはどう考えても納得できない」と謝罪を拒否した(自著「私の海軍式野球」 サンケイ出版)。

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