“ジュニアでも全日本に縁がなかった”津雲博子が「世界一のリベロ」と呼ばれた理由 「言葉では説明できない感覚が体の中に」(小林信也)
メンタルマネジメント
新たに生まれたリベロの役割や有効な活用法は、世界中どのチームにとっても未知数で手探りだった。
「アメリカのステーシー・シコラというリベロはすごくアクロバチックな動きでレシーブを拾っていました。リベロでチャンスを得た選手の一人でしょうね。ロシアのリベロは180センチくらいの大型選手でした」
レシーブだけでなく、コートとベンチを頻繁に往復するため、監督の助言を選手たちに伝えるのもリベロの重要な役割と認識された。やってみて分かった難しさがあったと津雲は言う。
「リベロで難しいのは、攻撃でリズムを立て直せないことでした。アタッカーなら、守備でミスをしても前衛に上がってスパイクを決めれば挽回できる、気分的にも元に戻せます。ところがリベロはミスをすると落ち込むばかりで、気分を上げるのが難しかった」
やがて打開のきっかけをつかんだ。それは間接的な攻撃参加だった。
「後ろからの声かけです。味方がアタックを打つ時、相手のブロックを予測して、枚数や方向を教えてあげる。本人は直前まで周りが見にくいので、私も誰かに助言されると助かりました」
津雲の助言が功を奏して見事なスパイクが決まると、自分が決めたような喜びを感じられる。次第にリベロのメンタルマネジメントも身に付けた。
津雲はWGCでベスト・レシーブ賞を受賞。98年世界選手権、99年W杯でもリベロを務めた。W杯ではベストサーブレシーバーとベストレシーバーの両タイトルを獲得。世界一のリベロと呼ばれた。
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