「なめられてたまるか」どころか米財務長官来日でも先行き不透明…トランプ政権との関税交渉、打開の秘策は「原油の大量購入」にあり

国際

  • ブックマーク

行き詰まった交渉を打開するカギは

 米国とは対照的に、日本の状況は厳しいと言わざるを得ない。米国の関税が災いして日本経済が景気後退入りするとの見方が強まった。

 石破首相は「国益を賭けた戦いだ。なめられてたまるか」と9日に異例の発言をしたように、交渉を重ねても一向に進展しない状況にいらだちを募らせている。

 4月以降、最も足繁く米国に訪問した海外の閣僚は、日本の赤澤経済再生担当大臣だった。だが、大きな成果を挙げることができず、最近では米国側のキーパーソンであるベッセント財務長官と会えなくなっている有様だ。

 そのベッセント長官が7月に訪日することが明らかになった。19日に予定されている大阪・関西万博の米国ナショナル・デーに参加するためで、関税交渉を巡る閣僚間協議が開催されるかどうかは今のところ未定だ。

 開催を希望している日本側にとって、交渉を大きく進展させる材料がほしいところだ。筆者は「米国産原油の大量輸入が有力なカードとなる」と考えている。

中東依存度の低下を実現する米国産原油

 トランプ氏は6月29日、日本は貿易赤字を減らす方策として、米国産原油の輸入を増やすことも可能だと述べた。

 その後、トランプ氏はこれに言及していないが、日本側にとってもメリットが大きい選択肢だ。なぜなら、原油輸入の中東依存度を下げることができる。

 日本の中東依存度は95%前後と高水準であることを尻目に、台湾や韓国は米国産原油の購入拡大で中東依存度の大幅低下に成功している。

 日本の石油企業は中東地域のサワー原油(硫黄分を多く含む原油)の処理に適した製油所を多く有していることから、これまで米国産のスイート原油(硫黄分が少ない原油)の購入に消極的だった。

 昨年の米国産原油の輸入シェアは台湾が29.1%、韓国が15.7%であるのに対し、日本は2.5%と圧倒的に小さかった。だが、今年5月は7.9%で過去最高となり、その結果、中東依存度は大きく低下した(90.5%)。

次ページ:官民挙げて米国産原油の購入拡大を

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。