「なめられてたまるか」どころか米財務長官来日でも先行き不透明…トランプ政権との関税交渉、打開の秘策は「原油の大量購入」にあり
高関税でもインフレが起きていない米国
トランプ米大統領は7月13日、「日本は我々に年間に何百万台もの車を売っている。我々はまったく売っていない。日本が米国の車を受け入れようとしないからだ。日本は米国の農産物もほとんど受け入れようとしない」と述べ、日米間の貿易不均衡について改めて不満を表明した。
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7日には、日本からの輸入品に8月から25%の関税を課すと発表した。懸念された30%台ではなかったものの、4月に発表していた24%より1ポイント高かった。
関税政策が米国経済に悪影響を及ぼすことから、日本側には“いずれトランプ政権は譲歩する”との楽観論があったものの、その思惑が外れてしまった形だ。
米国の強気の姿勢の背景には好調に見える経済がある。高関税にもかかわらず、米国ではインフレが起きていない。
米大統領経済諮問委員会(CEA)は8日発表した報告書で、輸入品は関税コストを上乗せしても関税発動前に比べて安いとの分析を示した。トランプ氏はこれを受けて、自分がずっと予測していたとおり、輸入価格は実際に下落していると胸を張った。
米株式市場は史上最高値を更新
インフレが生じていないのは、各国が米国向けの輸出価格を引き下げているからだ。
日本では自動車分野でこの動きが顕著だ。日本銀行が発表した6月の企業物価指数によれば、北米向け乗用車の輸出物価指数は前年に比べ19.4%低下した。同指数は4月に8.1%、5月に18.9%低下した。
金融市場もトランプ関税に動じなくなった。
トランプ氏は最大限の要求を突きつけて交渉を始めるが、実際の政策はより緩やかなものに落ち着く傾向があるとの認識が市場で広がったことから、米株式市場は史上最高値を更新している。
消費者と金融市場の間で混乱が生じていないことから、トランプ氏はさらに強硬姿勢を強めるのではないかとの憶測が出ている。
関税政策は財政面でもメリットが大きい。
米国の6月の財政収支は270億ドルの黒字となった。同月の関税収入が過去最高の272億ドルを記録したことが寄与した。2025年会計年度(2024年10月~2025年9月)の6月までの関税収入は1000億ドルを超え、通年ベースでは3000億ドルを大きく超える可能性があるとの予測が出ている。
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