「減反政策」「コロナ禍」「農家の廃業」だけじゃない…令和のコメ騒動を引き起こしたもうひとつの「決定的な理由」
「安いコメ」と「高い小麦」のコロナ禍
国によるコメ生産量の管理・把握ができていない実態は、「コロナ禍」で既に顕著に表れていた。
2020年からの新型コロナウイルス感染拡大により、飲食店やホテルなどは長い期間、時短営業などの自粛を余儀なくされた。すると国内では当然、コメの消費が落ちる。前出の元記者は、当時の取材中、「農水省ではコメが70万~80万トンぐらい余ると予測しているようだ」という、地元問屋の声を聞いたという。
「その余った分は2~3年かけて分割して減らしていくというプランだったようです。そのためコロナ禍当初は、余ったコメをどこに置くか、困るほどの状態だった」
ところが2023年5月、コロナウイルスが当時の「2類相当」から、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行し、飲食店や宿泊施設の営業が通常に戻ろうとしている頃、予想外なことが起きた。
「これでまたコメの需要が戻って来るぞと、いざ蔵を開けたら、意外とコメがなかったんです」(同)
その理由は「生産者たちの廃業」にある。
「コロナ感染拡大当初、コメは余って値段が下がった。一方、そのタイミングでロシアがウクライナ侵攻による戦争を始め、全体的な物価は上昇。コメ作りに必要な肥料などは価格が倍近くになり、コメ作りを続けられなくなった農家が廃業していったんです。つまり、『これだけ余る』と推定していたコメの量と、その3年の間に農家をやめた生産者の数が釣り合ってしまった。さらに、全体の物価上昇とともに小麦の価格が上昇。安くなっていたコメに需要が集中し、コメが余らなかった」(同)
この農家の廃業には現場の深刻な「高齢化」も影響している。
農林水産省のデータによると、令和6年における農家の平均年齢は69.2歳。過酷な肉体労働のうえ、連年の酷暑だ。収入は時給にするとわずか「10円」というケースもある状況で、農家はいつ廃業しても不思議ではない状況が続いている。
ある大手のコメ問屋は、毎年5%ずつ全国から農家が減っていくと想定しているという。
「コメの生産地にいれば、その危機的な状況がよく分かります。田んぼがボコボコと荒れ地になっていく。年中『あれ、ここも田んぼやめちゃったのか』みたいな光景が年々広がっていくんです」(元記者)
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