「減反政策」「コロナ禍」「農家の廃業」だけじゃない…令和のコメ騒動を引き起こしたもうひとつの「決定的な理由」

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「令和のコメ騒動」

 コロナ明けでコメが残っていない――。そんな状況のなか、運悪く起きたのがあの2023年「不作」だった。「史上最も暑い夏」となった同年は、コメの高温障害によって1等米の全国平均比率が59.6%となり、調査が開始された2004年以降、過去最低となった。

 さらに翌年の2024年8月8日、宮崎県日向灘で発生した地震で、政府が「南海トラフ地震」発生の可能性を示唆したことで、全国的に不安が一気に広がり、コメの買いだめが発生。価格高騰・品薄をもたらした。

 これで一気に在庫が消失。今に続く「令和のコメ騒動」の決定的なダメ押しになったのだ。

コメが店頭に並ばなかったもう1つの理由

 一時期、スーパーからコメが姿を消したのは、もう1つ、ある大きな要因があると推測できる。それは、「輸送の混乱」だ。

「コメが獲れる時期は年に1回だが、消費者が食べるのは365日。一度に取れたその米を、世間の動向を見ながら1年間でどう運び流通させるか最初に計画を立てる。そこに、あの緊急放出が決まった。これほどの短期間に大量のコメを運べといわれたら、当然物流は滞ります。ましてや運送業界は『2024年問題』で輸送能力が落ちている。混乱しないわけがない」(同)

 スーパーの品薄、という現象でいうと、コロナ禍のなか、「原材料が中国から輸入できなくなる」といったSNSでのデマから始まったトイレットペーパーの買い占めが思い出される。

 当時、SNSで流れていた「中国での生産不足」は完全なるデマで、日本の物流倉庫には国内で作られた大量のトイレットペーパーが積み上げられていた。この際にも起きていたのが「物流の混乱」だった。

 今回のコメ不足は、このようにタイミング悪く様々な不可抗力が何層も織り重なり起きたものだ。が、国によるコメ生産量の把握・管理や消費者の買いだめなど、人為的な要因のなかには防げたことも多いといえるだろう。

 次回は、その備蓄米を保管する倉庫会社の苦しい状況について紹介しよう。

橋本愛喜(はしもと・あいき)
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許を取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働問題、災害対策、文化差異、ジェンダー、差別などに関する社会問題を中心に執筆中。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書)、『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』(KADOKAWA)

デイリー新潮編集部

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