「タワマンなど高級な物件を好む傾向が」 猛成長する“中国人向けビジネス”に目を付けた新興不動産業者とは
外国人顧客が17%増加
富裕層や知識層が、窮屈な中国社会を嫌って日本に移住してくる「潤日(ルンリィー)」が止まらない。そのせいで大都市のタワマンは爆上がりし、進学校や有名大学では中国人の秀才がやたらと目立つようになってきたが、この動きを絶好の“商機”と捉える企業もある。東証グロース市場に上場している不動産会社「アンビションDXホールディングス」もその一社だ。
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同社の売上高は通期予想で532億円。不動産業界では“新顔”だ。ここ2年ほどは年間10~20%台というペースで急成長しているが、その原動力が「潤日」なのだという。5月15日には、
〈中国富裕層の「潤日」需要を全方位で捉え事業拡大―売買仲介・販売・賃貸の主要事業で顕著な成果―〉
と題したニュースリリースを発表したほどである。それによると、この2年で同社が企画したマンションを購入した外国人顧客は17%増え、賃貸物件でも3年で借り手が50%増加したとある。そこで、同社に聞いてみると、
「当社の売り上げの5割以上がマンションなど物件販売によるものです。ここには中国人のお客さんも含まれており、やはり、タワーマンションなど高級な物件を好まれる傾向にあります」(IR担当者)
“潤日”ビジネスの広がり
中国事情に詳しいインフィニティのチーフエコノミスト・田代秀敏氏が言う。
「日本人と中国人では不動産の買い方がまったく違います。中国人は、物件を見て気に入ったら即決する。そして、決まったら入金も早い。売り手からすれば、日本人よりビジネスがやりやすいのです。一方、大手デベロッパーの中には外国人に高級マンションを売りたがらない業者も出てきました。メディアに騒がれたり保守系の政治グループから標的にされたりするのを嫌ってのことでしょう。その間隙を突いて、新興の不動産業者が中国の富裕層に食い込んでいるのです」
ところで、この「潤日」という現象に、いち早く注目し、世に知らしめたのは、『潤日 日本へ大脱出する中国人富裕層を追う』(東洋経済新報社)の著者で中国・東南アジア専門ジャーナリストの舛友雄大氏だ。
その舛友氏によると、
「取材していると中国人富裕層の“潤日”は、大都市から地方にも広がっている実感があります。また、これまでのようなタワーマンションの爆買いだけでなく、金融や教育など、“潤日向け”ともいえるビジネスが広がってきています」
日本人が知らないところで、もう一つの「日本社会」が出来上がりつつある。